こんにちは、春日井コワーキングスペースRoom8オーナーの鶴田です!
2014年4月にRoom8を始めてから、もう11年が経ちました。当時を振り返ると、まだ「コワーキング」という言葉すら知らない人がほとんどで、「え?何それ、シェアハウスの仕事版?」みたいな反応が当たり前でした。
ところが最近は、初回の問い合わせで「ChatGPTの使い方教えてもらえますか?」「AIで業務効率化したいんですが…」なんて相談が飛んでくる時代。11年前の僕に「将来、人工知能の相談を受けるようになるよ」って言っても、絶対信じなかったでしょうね。
今日は、この11年間で利用者さんからの「質問」がどう変わってきたかを振り返りながら、地方の働き方がどれだけ変化したかを語ってみたいと思います。そして、質問の変化を見ていると、実は日本の働き方改革の「リアルな進行状況」が手に取るようにわかるんですよ。
2014年〜2016年:「わかってる人」だけが集まった秘密基地時代
実際の店内での質問は意外とマニアック
当時Room8に来る人って、すでに「コワーキング」を知ってる人ばかりでした。だから店内で「コワーキングって何ですか?」なんて聞かれることはほとんどなくて、むしろ
「ここのWi-Fi、上り速度どのくらいですか?」
「プリンターはレーザー?インクジェット?」
「電源の位置、設計図見せてもらえます?」
みたいな、めちゃくちゃ具体的で技術的な質問が多かったんです。
本当の「基本のキ」は外で聞かれた
「コワーキングって何ですか?」は、むしろ街で知人に会った時の定番でした。
「鶴田さん、最近何やってるの?」
「コワーキングスペース始めたんです」
「え?何それ?共働き?」
「いえ、Co-workingで…」
この説明を年間何百回したことか。今思えば、Room8の「外」の方が営業活動してた感ありますね。
来る人は「わかってる」から質問の質が高い
実際に利用してくれる人は、すでにノマドワーカーだったり、フリーランスだったり、「新しい働き方」を模索してる人ばかり。だから質問も:
「集中できる席とコミュニケーション取りやすい席、分かれてます?」
「常連さん同士の交流イベントとかあります?」
「ここで仕事した人同士でコラボとか生まれてます?」
みたいな、めちゃくちゃ本質的なことを聞いてくる。今振り返ると、かなり贅沢な環境でしたね。
2017年〜2019年:働き方改革で「普通の会社員」が来るようになった転換期
「会社員でも使えますか?」
この質問が出始めたのがこの時期です。政府の働き方改革が本格化して、「副業解禁」「テレワーク推進」なんて言葉が踊り始めた頃。
それまでの「フリーランス・ノマド限定感」から、急に「普通の会社員」が興味を持ち始めました。でも、まだ恐る恐るって感じでしたね。
「すみません、私サラリーマンなんですけど、ここ使っても浮かないですか?」
なんて謙虚に聞いてくる人が多くて、「全然大丈夫ですよ!」って答えながら、時代の変化を実感してました。
「副業の相談できますか?」
働き方改革の影響で、副業に関する質問が爆増。でも、この頃の副業相談って:
「何から始めればいいかわからない」
「会社にバレないようにするには?」
「確定申告ってどうするんですか?」
みたいな、超基本的なことばかり。今のような「AIで副業を効率化」なんて発想は皆無でした。
「Slack使ってる人いますか?」
この時期から急にツール系の質問が増えました。ChatworkやSlack、Trelloなんかを「使ってみたいけど一人だと寂しい」って理由で、仲間を探しに来る人が続出。
今思えば、みんな「デジタルツール使えるようになりたい」って意識はあったんですよね。ただ、まだ個人レベルでの活用が中心でした。
「テレワークの練習がしたい」
2019年あたりから、この質問がちらほら出始めました。でも実態は、「会社でテレワーク制度ができたって言うけど、実際はほとんど使われてない」って状況。
「うちの会社も一応テレワークOKになったんですけど、誰も使ってないし、実際どうやればいいかわからなくて…」
みたいな、制度だけ作って放置パターンが大半でした。
一方で、Room8には東京のIT企業に勤めるエンジニアの方が、完全リモートで働きに来てました。その人を見て、他の利用者が「あ、本当にリモートワークって成立するんだ」って驚いてる光景をよく目にしましたね。
つまり、2019年時点では:
- 建前:「テレワーク推進!」
- 現実:ほとんどの会社で絵に描いた餅
- 例外:IT系の一部企業では既に当たり前
って感じで、かなり温度差がありました。地方で「本物のリモートワーカー」を実際に見られる場所って、コワーキング以外になかったかもしれません。
2020年〜2022年:フリーランス→サラリーマンへ、利用者層が大転換した激変期
利用者の大逆転現象
コロナ前(2019年まで)
- フリーランス・個人事業主:9割
- 会社員:1割
コロナ後(2020年〜)
- テレワークのサラリーマン:5割
- フリーランス・個人事業主:5割
なんと、主要顧客層が完全に入れ替わりました。これは予想してませんでしたね。
「いつものメンバー」が消えた
これまで常連だったフリーランスの方々が、自粛でパタッと来なくなりました。「人との接触を避ける」って流れで、わざわざ外に出て仕事する理由がなくなったんですよね。
一方で、急に「在宅勤務になったけど家だと無理です」って会社員の方がどんどん来るように。それまで接点のなかった業界の人たちが一気に流入してきました。
質問の内容も激変
フリーランス時代の質問
「プリンターの紙、補充してもらえます?」
「領収書、宛名なしでお願いします」
「Wi-Fi、今日調子悪くないですか?」
テレワーク会社員の質問
「Zoomミーティング中、声が漏れませんか?」
「会社の資料、プリントアウトしても大丈夫ですか?」
「セキュリティ的に問題ありませんよね?」
フリーランスは「慣れてる」から質問も実務的。会社員は「初めて」だから、基本的なことから不安になる。同じ空間にいても、求めるものが全然違いました。
【緊急挿入】コロナ禍の大移転劇:2週間で決断した理由
そんな激変の最中、2021年3月にRoom8は大移転を敢行しました。
現在のRoom8があるネクシティパレッタ1階、元々はナフコというスーパーがあった場所なんです。2019年頃から、ナフコ撤退後にカフェなどの飲食店が入る計画が進んでいました。
ところが2020年春、コロナ直撃。飲食店なんて開業してる場合じゃない状況に。
そんな2020年11月頃、商工会議所副会頭で株式会社まちづくり勝川の社長、株式会社水徳の元社長である水野さん(僕らの間では「ボス」)から連絡が。
「鶴田さん、うちに来ない?」
これ、掴むしかないじゃないですか(笑)
問題は資金調達。そんなに儲かってるわけでもないうちが、コロナ禍真っ只中に銀行がお金を貸してくれるはずもなく…
借りましたとも!人脈を使って頭を下げて、「コロナでテレワークが定着する今こそ、コワーキングの時代が来る」って事業の将来性を必死に語りながら。
2週間で300万円調達して、移転決定。今思えば、あの時説得に応じてくれた方々には本当に感謝しかありません。(まだ返済は続いております・・・)
「元に戻るかと思ったら、戻らなかった」
2021年後半あたりから、「そろそろ元の働き方に戻るのかな?」って思ってたんですが、結局戻りませんでした。テレワークが定着して、むしろサラリーマンの利用が安定化。
一方、フリーランスの方は完全に在宅ワークにシフトして、コワーキングを使わなくなった人も多かったです。
この時期の特徴:同じ「リモートワーク」でも、求めるものが正反対
慣れてる人は「集中」「効率」重視。初心者は「安心」「サポート」重視。コワーキングに求められる機能も、この時期に大きく変わりましたね。
2023年〜2025年:ChatGPTの衝撃で僕自身が「AIの人」になった現在
ChatGPTの登場で「これだ!」と確信した瞬間
2022年末のChatGPT登場、あれは本当に衝撃でした。
それまでもAIは話題になってたし、僕自身興味は持ってたんですが、全然身近じゃなかったんですよね。どこか「研究室の中の話」って感じで。
ところがChatGPTが出た瞬間、「これだろ!これからの時代は!!」って確信しました。世界が変わった瞬間でした。
「AIは嘘をつく」→「指示が悪いからだ!」
当初、周りでは「AIは嘘をつく」「全然使えない」っていう声が多かったんです。でも僕は「それは指示が悪いからだ!」って思って、プロンプトエンジニアを目指してひたすら使い倒してました。
どうすれば正確な回答が得られるか、どんな指示の仕方が効果的か、毎日実験の繰り返し。気がついたら、地元でも「AI詳しい人」って認識されるようになってました。
自然とAIコンサルを始めることに
そんな流れで、自然とAIコンサルを始めました。すると、地元の中小企業さんから「Room8でAI相談もやってるらしいよ」って噂が広まって:
「プロンプトの書き方、教えてもらえませんか?」
「うちの会社でAI導入したいんですが、何から始めれば?」
「ChatGPTで業務効率化って、具体的にどうやるんですか?」
みたいな相談が来るようになったんです。
普通のコワーキングスペースで「AI相談」なんてありえないですけど、僕が「AIの人」になったから、自然とそういう相談が集まってきたって感じですね。
地方で見えた「AI格差」のリアル
AIコンサルをやるようになって、地方の中小企業の「AI格差」がよく見えるようになりました:
AI初心者層:「ChatGPTって何ですか?」「危険じゃないんですか?」
AI中級者層:「業務でどう活用すれば?」「費用対効果は?」
AI上級者層:「最新モデルの特徴は?」「GPTsって作れますか?」
同じ地域にいても、知識レベルの差が激しい。そして、その差が確実に仕事の成果に影響してるのを間近で見てるので、結構深刻だと思ってます。
コワーキングとは比較にならない衝撃レベル
「AIやらないとダメですか?」って切実に聞いてくる経営者の方、結構多いんです。これ、11年前の「コワーキングって必要ですか?」と似てるようで、でも全然違うんですよね。
11年前、コワーキングの存在を知った時は「これはすごい、こういう場所が春日井に欲しい」って感じでした。地域レベルでの「あったらいいな」って話。
でもAIは、それを遥かに超える衝撃なんです。「世界が変わる」レベルの話。
コワーキングは「働く場所」を変えただけですが、AIは「働き方そのもの」「思考のプロセス」「ビジネスの根幹」まで変えちゃう可能性がある。しかも、その変化が1年とかの超短期間で起きてる。
地方企業が直面する「時代の分岐点」
だからこそ、「AIやらないとダメですか?」って質問の重みが、11年前とは全然違うんです。コワーキングを知らなくても、別に致命的じゃなかった。でもAIを知らないと、本当に置いていかれる可能性がある。
11年間、働き方の変化を間近で見てきましたが、AIの変化スピードは異常です。のんびり構えてる余裕がないのが、今の時代のリアルですね。
この時期の特徴:文明レベルの変化に戸惑う地方企業
コワーキングは11年かけてゆっくり浸透しましたが、AIは1年で社会を変えちゃいました。その変化の速さとインパクトの大きさに、正直、僕自身も日々驚いてます。
まとめ:11年間の質問変化で見えた「働き方進化」のリアル
振り返ってみると、質問は時代の鏡だった
2014年:「コワーキングって何ですか?」
2025年:「AI相談できますか?」
この11年間の質問の変化を振り返ると、まさに日本の「働き方進化」の歴史そのものでした。
フェーズ1(2014-2016年):わかってる人だけの秘密基地
フェーズ2(2017-2019年):働き方改革で普通の会社員が参入
フェーズ3(2020-2022年):コロナで強制的に全員参加
フェーズ4(2023-2025年):AIで文明レベルの変化
それぞれの時期で、利用者の層も、抱える悩みも、求める解決策も全然違いました。
結局、人は「変化への不安」を相談しに来る
11年間を通して気づいたのは、技術が変わっても、人の本質は変わらないということ。
「コワーキング使っても浮かない?」
「テレワークで会社にバレない?」
「AIやらないとダメ?」
形は違えど、みんな「新しいことへの不安」を相談しに来るんです。Room8は、結果的に「変化への不安を解消する場所」として機能してきたのかもしれません。
次は何が来るのか?
正直、AIの次に何が来るかは想像もつきません。でも、11年間見てきた経験から言えるのは:
- 必ず次の変化は来る
- 最初は「わかってる人」だけが使う
- 徐々に一般化して、最後は強制参加になる
- その度に、みんな不安になって相談しに来る
この繰り返しなんでしょうね。
Room8は「働き方の実験場」であり続けたい
春日井という地方都市で、11年間働き方の変化を最前線で見続けてきました。大都市より変化は遅いかもしれませんが、その分「リアルな困りごと」「素朴な疑問」が集まってくる。
次にどんな技術が来ても、どんな働き方が生まれても、Room8は「新しいことに挑戦したい人」「変化に不安を感じる人」が気軽に相談できる場所であり続けたいと思います。
最後に一言
11年前、「こういう場所が春日井に欲しい」って思って始めたRoom8。今では「AI相談もできるコワーキング」として、予想もしなかった進化を遂げました。
でも、根っこの部分は変わってません。「新しい働き方を試したい人を応援する」。これからも、時代の変化と一緒に、Room8も進化し続けていきます。
そして、次に何が来ても、きっとまた「○○って何ですか?」から始まるんでしょうね(笑)