こんにちは、春日井コワーキングスペースRoom8オーナーの鶴田です。最近Room8では「AIで副業したいんですけど…」という相談が激増してて、僕も毎日のように現実とのギャップにツッコミを入れまくっています。
僕はChatGPTが登場した2年半前からずっとAIの現場にいて、この技術の変化をリアルタイムで見続けてきました。当時「プロンプトエンジニア年収2000万!」とか「これからの時代はプロンプトスキル!」とか言われてた頃から、実際に手を動かし続けてきた立場として、今のAI起業ブームには思うところが色々あります。
ChatGPT登場当初、確かにプロンプトは重要でした。当時のAIは本当にプロンプト次第で、ちょっと書き方を変えるだけで全然違う結果が返ってくる。僕も「意図した回答を引き出すコツ」を掴むのに相当時間をかけましたし、そのスキルには価値があると思ってました。
でも技術の進歩は僕の想像を遥かに超えていた。1年もしないうちに、あの時必死に身につけたプロンプト技術の大部分が無意味になったんです。
今日は、AI現場に立ち続けてきた僕の視点から、AI起業で本当に残るものと消えるものを、Room8での相談事例も交えながら現実的に語ってみたいと思います。甘い幻想を抱いてる人には厳しい話もありますが、だからこそ本当のチャンスも見えてくるはずです。
技術の陳腐化速度が半端じゃない件

プロンプトスキルの栄枯盛衰
僕はChatGPT登場時から「AIを使いこなせる人が勝つ」と確信してて、そのためにプロンプト研究に相当な時間を費やしました。
当時のGPT-3.5は本当に気分屋で、同じ質問でもプロンプトの書き方次第で全然違う答えが返ってくる。「営業メールを書いて」だけだと、テンプレートみたいな使い物にならない文章しか出てこない。でも「あなたは経験豊富な営業マネージャーです。新規開拓のためのメール文面を、相手の業界に合わせて親しみやすく、かつ専門性をアピールできるトーンで書いてください」みたいに詳細に指示すると、びっくりするほど良い文章を生成してくれる。
Room8でも当時、プロンプト相談が殺到しました。「どう書けばもっと良い答えが返ってくるんですか?」「この書き方で合ってますか?」って、みんな必死にAI活用スキルを磨こうとしてた。僕も「意図した回答を引き出すコツ」を掴むのに1年かけたんです。
でも、それが通用したのは1年だけ。GPT-4が登場し、Claude、Geminiと次々に新モデルが出るたびに、プロンプトの重要度は激減。今のClaude Sonnet 4なんて、適当に「営業メール書いて」って投げても、かなり使えるレベルの文章を返してくれますからね。
自動化システムも一瞬で陳腐化
次に僕が取り組んだのは業務自動化。最初はAIにコードを書かせて時短してたんですが、「そもそもAPIでAIに直接処理させればもっと効率的じゃん」と思って、独自の自動化システムを構築したんです。
データの読み込みから分析、レポート生成まで、全部AIに投げる仕組み。コードも大幅に短縮できるし、これは革新的だと思ってました。実際、Room8のメンバーからも「すげー、これ便利!」って好評だったんです。
そしたらClaudeがMCP(Model Context Protocol)なる、僕の考えた仕組みの完全上位互換を出してきた。僕が苦労して作った自動化システムが、Claudeの標準機能として実装されちゃったわけです。もう笑うしかない。
陳腐化速度の現実
この2つの経験で痛感したのは、技術に依存したスキルの陳腐化速度が異常だということ。
- 3ヶ月で新しいモデルが出て
- 半年で常識が変わって
- 1年で専門スキルが無意味になる
「プロンプトエンジニア年収2000万」なんて話も、今となっては完全に過去の遺物。アメリカでも、プロンプトエンジニアの求人は激減してるって話ですからね。
だからこそ、今のAI起業ブームで「技術的優位性」を売りにしてる分野は、ほぼ確実に淘汰されると思ってるんです。僕みたいに、せっかく身につけたスキルが一瞬で無価値になる未来が待ってる。
でも、これは絶望的な話じゃありません。技術の陳腐化が早いからこそ見えてくる、本当に価値ある分野があるんです。
AI起業4分野の現実チェック – 何が残って何が消えるのか

さて、ここからが本題です。現在のAI起業ブームを整理すると、大きく4つの分野に分かれてると思うんですよね。Room8での相談内容も、ほぼこの4パターンに集約されます。
1. プロンプト職人系:技術進歩で秒殺される運命
「Midjourney使って画像作成代行します」「動画生成スクールやります」
Room8にも「画像生成で稼ぎたい」「動画作成のスクール始めたい」って相談が結構来るんですが、正直言って賞味期限がめちゃくちゃ短いです。
今はMidjourneyやStable Diffusion使って「それっぽい画像」を作るのに多少のスキルが必要だけど、半年後にはどうなってるか分からない。実際、Canvaとかの一般ツールにも生成AI機能がバンバン実装されてきてるし、普通の人でも簡単に高品質な画像や動画を作れるようになってきてる。
技術の民主化が進めば進むほど、専門スキルの価値は下がる一方。僕のプロンプト体験と全く同じ構造です。
2. コンテンツ販売系:情報の賞味期限が3ヶ月
「AIで稼ぐ方法をnoteで販売」「Brain教材で情報販売」
これも相談多いんですよ。「AIノウハウをまとめて売りたい」って。でも冷静に考えてみてください。AIの情報って、3ヶ月もすれば古くなりません?
今月「最新のChatGPT活用法!」って売ってた教材が、来月には「古い情報」になってる。購入者からクレームが来て、常にアップデートに追われて、気がついたら情報収集と教材作成で手いっぱい。本末転倒ですよね。
しかも、無料で手に入る情報との差別化がどんどん難しくなってる。YouTubeでもブログでも、質の高いAI情報がタダで手に入る時代に、有料コンテンツに何万円も払う理由って何でしょうか?
3. 業務自動化系:人手不足で需要は継続
「Excel作業の自動化」「kintone・Notion活用支援」
ここからが、僕が「生き残る」と思ってる分野です。なぜなら企業の本質的な課題を解決してるから。
Room8でも最近、「請求書作成が毎月20時間かかってて…」「営業資料作りで残業続いてるんです」みたいな、地味だけど切実な相談が激増してます。これって、AIがどれだけ進歩しても変わらない企業ニーズなんですよね。
技術は変わるけど、「面倒な作業を効率化したい」という企業の願いは不変。プロンプトがどうとか、どのAIツールがいいとかじゃなくて、結果的に業務が楽になればいいわけです。
4. AIコンサル系:黎明期のカオス需要
ここが一番カオスな分野です。なぜなら、AIはまだ黎明期で、どの企業も手探り状態だから。
Room8でも「AIコンサルやりたい」って相談が来るんですが、内容を聞くと「ChatGPTの基本的な使い方をレクチャーする」から「本格的な業務フロー改善」まで、めちゃくちゃ幅が広いんですよね。
企業側の現実を考えてみてください。
- AIを導入したいと思ってる
- でも社内に扱える人がいない
- とりあえず「ChatGPTってどう使うの?」から始めたい
- もう少し慣れたら「業務にどう活かせる?」を知りたい
- 最終的には「うちの業務フローに合わせたAI活用」を求める
つまり、「ChatGPT基礎講座」も「本格的なDX支援」も、どちらも現在進行形で存在する需要なんです。黎明期だからこそ、入り口の需要から奥深い需要まで、全部ごちゃ混ぜに存在してる。
ただし、時間とともに需要は変化していくはず。みんなが自然にChatGPTを扱える時代になれば、基礎的な使い方を教える需要は消滅する。その時に残るのは、より深い業務改善ニーズに応えられるスキルを持った人たちでしょうね。
少子化×人手不足が生む本当のチャンス

企業の切実すぎる現実
ここからが、僕が「AI起業で本当にチャンスがある」と思ってる理由です。
日本の少子化って、もはや止めようがないレベルまで来てますよね。厚生労働省のデータを見ても、生産年齢人口は2050年まで減り続けるのが確定してる。つまり、どの企業も「人手不足」という構造的な問題を抱え続けることになる。
Room8でも最近、相談内容がガラッと変わってきました。去年までは「ChatGPT使えるようになりたい」みたいな学習系の相談が多かったんですが、今は完全に業務課題解決系にシフトしてる。
実際の相談例:
- 「請求書作成が毎月20時間かかってて、これを半分にできませんか?」
- 「営業資料作りで毎回3時間かかる。テンプレート化できない?」
- 「顧客対応メールの返信作成に時間がかかりすぎる」
- 「在庫管理の集計作業が面倒で、月末はいつも残業」
どれも地味だけど切実な悩みばかり。そして、これらの悩みって「AIがどれだけ進歩しても変わらない」んですよね。
技術より課題解決能力が重要
ここで重要なのは、どのAIツールを使うかじゃなくて、どう課題を解決するかということ。
例えば、さっきの「請求書作成20時間問題」。解決方法は色々あるわけです:
- ExcelマクロでAI連携させる
- kintoneで自動化する
- Notionデータベースを活用する
- 専用の請求書ツールにAI機能を組み合わせる
大事なのは「20時間を10時間にする」という結果であって、ChatGPTを使ったとかClaude使ったとかは、企業からしたらどうでもいい話なんです。
カオス期だからこそ準備できること
現在のAI界隈がカオス状態だからこそ、今のうちに準備しておけることがあるんですよね。
1. 業務分析スキル
企業の業務フローを理解して、どこにボトルネックがあるかを見つける能力。これはAI技術とは関係なく、普遍的に価値があるスキル。
2. 課題解決の引き出し
「この手の問題なら、こういう解決策がある」という選択肢をたくさん持っておく。AIツールは手段の一つでしかない。
3. 実装・運用サポート
システムを作って終わりじゃなくて、実際に現場で使えるように支援する能力。これが一番重要で、一番軽視されがち。
みんながプロンプトがどうとか、どのAIが優秀とかで騒いでる間に、地味だけど本質的なスキルを身につけておけば、技術の進歩に左右されない価値を提供できるようになるはずです。
まとめ:AIは絶対来る、だから今やるべきことがある

幻想と現実の整理
今日話してきたことを整理すると、こういうことです。
消える分野:
- プロンプト職人系 → 技術の民主化で専門性が無意味に
- コンテンツ販売系 → 情報の賞味期限が短すぎて持続不可能
残る分野:
- 業務自動化系 → 人手不足という構造的問題を解決
- AIコンサル系 → 黎明期の多様な需要に対応、深い課題解決へ進化
「プロンプトエンジニア年収2000万」みたいな甘い話に踊らされるのはもうやめましょう。技術に依存したスキルは、技術の進歩と共に無価値になる運命にあります。僕みたいに、1年かけて身につけたスキルが一瞬で陳腐化する体験をしたくなければ、です。
でも絶望する必要はない
ここからが重要なんですが、AIは絶対来ます。これは間違いない。
日本の少子化は止まらないし、人手不足はますます深刻になる。企業は生き残るために、業務効率化を本気で進めざるを得ない状況に追い込まれてる。つまり、AI活用は選択肢じゃなくて必須事項になるんです。
ただし、求められるのは技術的な優位性じゃなくて、課題解決能力。「このAIツールすごいでしょ?」じゃなくて「あなたの20時間の作業を10時間にできます」って言える人が勝つ。
今やるべきこと
カオス期の今だからこそ、準備しておけることがあります:
1. 業務分析スキルを磨く
企業の困りごとを見つけて、本質的な課題を特定する能力。これはAI技術とは無関係に価値があるスキル。
2. 解決手段の引き出しを増やす
AIツールだけじゃなくて、Excel、kintone、Notion、各種SaaSツールなど、課題解決の選択肢をたくさん持っておく。
3. 実装・運用支援の経験を積む
システムを作って終わりじゃなくて、現場で実際に使えるようにサポートする。これが一番重要で、一番差別化できる部分。
僕からのメッセージ
AIバブルに踊らされて、技術の追いかけっこに疲れてる人も多いと思います。でも、本当に価値があるのは技術じゃなくて、それを使って誰かの課題を解決することなんですよね。
プロンプトがどうとか、どのAIが最強とかで騒いでる間に、地味だけど本質的なスキルを身につけていく。そうすれば、技術がどれだけ進歩しても、あなたの価値は揺らがないはずです。
AIは絶対来る。だからこそ、今準備すべきことがちゃんとある。
甘い幻想は捨てて、でも希望は持ち続ける。それが、AI時代を生き抜く一番現実的な戦略だと思います。
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