「いいアイデア」を追うな:小規模起業で成功する「強み一点突破」戦略

こんにちは、春日井コワーキングスペースRoom8オーナーの鶴田です!

最近、うちに相談に来る起業志望者の話を聞いてると、みんな同じパターンなんですよね。

「市場調査したら、○○のニーズがありました!」
「このジャンル、今すごく伸びてるんです!」
「まだ競合が少ない穴場を見つけました!」

まあ、気持ちは分からなくもないんですけど、正直言って僕は内心「あー、またか…」って思ってます。

なぜかって?

まあ、統計見れば分かることなんだけどね。スタートアップの約90%が失敗してて、失敗した企業の42%が「市場ニーズなし」を理由に挙げてる。つまり、みんなが「ニーズがある」と思って始めたビジネスが、実際には誰も欲しがってなかったってオチ。

で、成功してる10%を見てると、別に「儲かりそうなニーズ」を探してたわけじゃない。自分の強みを最大活用できる場所を見つけて、そこに一点集中してるだけなんですよね。

今日は、なぜ「ニーズ探し」から始める起業が失敗しやすいのか、そして小規模事業者が本当に成功するための考え方について話そうと思います。

まあ、「色々なニーズに応えたい」「儲かりそうな市場に参入したい」って思ってる人ほど、この先読んでもらえればと思う。その考え、たぶん君の起業の足引っ張ってるから。


みんながハマる「ニーズ探し」の罠

うちに来る起業相談で一番多いのが「ニーズ発見症候群」なんですよね。

「高齢者向けのサービス、すごくニーズありそうです!」
「AI分野、今めちゃくちゃ伸びてますよね!」
「地方創生、国も推進してるし確実にニーズありますよ!」

はいはい、分かった分かった。

でも、ドラッカーが何て言ってたか知ってます?「顧客は何を欲しがっているかわからない」って。つまり、市場調査で「こんなサービス欲しいですか?」って聞いても、まともな答えは返ってこないってこと。

さらに言うと、コトラーのマーケティング理論で重要なのはSTP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)です。全市場を狙うんじゃなくて、自分が勝てるセグメントを選ぶことが先なんですよ。

でも多くの起業家は、この順番を完全に間違えてる。

間違ったアプローチ:

  1. 世の中のニーズを探す(市場調査)
  2. 儲かりそうなネタを見つける
  3. それに合わせて商品・サービスを作る

正しいアプローチ:

  1. 自分の強みを棚卸しする
  2. その強みがフィットするニーズを探す
  3. そこに一点集中する

特にお金のない小規模事業者ほど、この罠にハマりやすいんです。

なぜかって?「儲かりそう」って聞くと、つい手を出したくなるじゃないですか。でも実際は:

  • 「高齢者向けサービス」→ でも介護業界の経験ゼロ
  • 「AI分野参入」→ でもプログラミングできない
  • 「地方創生事業」→ でも行政との人脈なし

結果、何が起きるか?全部中途半端。

まあ、僕も昔は同じようなことやってたから、偉そうなこと言えないんですけどね。「流行ってるから」「ニーズがありそうだから」で色々手を出して、結局どれも中途半端でした。

でも、なぜこの「ニーズファースト」の考え方がダメなのか、もう少し掘り下げてみましょうか。


大企業と小規模事業者の決定的な違い

でも、ちょっと考えてみてほしいんです。

トヨタを見ると分かるけどさ、高齢者向け(クラウン)、若者向け(86)、ファミリー向け(ヴォクシー)、エコ志向(プリウス)…色々なニーズに対応してるじゃないですか。

でも、これって資源が無限にある大企業だからできることなんですよね。

君が個人で車作るとして、「高齢者にも若者にもファミリーにもエコ志向の人にも全部対応する車」なんて作れますか?絶対無理でしょ。

コワーキング業界でも同じことが起きてます。

僕が知ってる範囲だと:

  • A社: 学生向けに特化(オーナーが元塾講師)
  • B社: セミナー・イベント中心(オーナーがイベント企画出身)
  • C社: オシャレなインスタ映えスポット(オーナーがデザイナー)

よく見てください。みんな自分の強みを活かしてるんです。

ところが、よくあるのが「A社は学生で成功してるから、うちも学生向けやろう」って考え。でもそのオーナーに塾講師の経験ありますか?学生指導のスキルありますか?

でもちょっと待ってください。

学生向けコワーキングって、静かな環境が超重要なんです。勉強に集中したいから。

一方、セミナーやイベントってコミュニケーションが重要でしょ?参加者同士の交流とか。

この2つ、根本的に相反するんですけど、気づいてます?

静かな勉強空間を作ったら、交流したい人には「静かすぎる」って言われる。逆に交流重視にしたら、勉強したい人には「うるさい」って文句言われる。

結局、どっちからも選ばれない中途半端な空間ができあがるんです。

これが「色々なニーズに応えよう」とする小規模事業者の末路なんですよね。


データが証明する「深く刺さる」ことの重要性

で、これって僕の感想じゃなくて、ちゃんと統計で証明されてる話なんです。

まず、導入で触れた数字の出典から。

CB Insightsが111社のスタートアップ失敗事例を分析した結果:

  • 42%が「市場ニーズなし」で失敗
  • その他の主要因:資金不足(29%)、チーム問題(23%)、競合の存在(19%)

さらに、複数の調査を統合すると約90%のスタートアップが失敗してるのが現実です。

つまり、みんな「ニーズがある」と思って始めたのに、実際にはニーズがなかった、または自分にはそのニーズを満たす能力がなかったってことなんです。

でも、成功する10%には共通パターンがあるんです。

Sean Ellisっていうマーケティングの専門家がいるんですけど、この人がDropbox、LogMeIn、Eventbriteなんかの成長を手がけた時に発見した法則があります。

それが「40%ルール」

顧客に「このプロダクトが使えなくなったらどう感じますか?」って聞いて、40%以上が「非常に失望する」と答えたら、そのビジネスは成功する可能性が高い。逆に40%を下回ったら、まず苦戦するっていう話。

この調査、100社以上のスタートアップを対象にやったんですけど、結果は明確でした。

  • 40%以上: 持続可能なビジネスを構築できた
  • 40%未満: ほぼ全てが苦戦、多くが失敗

例えばSlackなんて、調査した時点で51%のユーザーが「非常に失望する」って答えてた。今のSlackの成功を見れば、この数字の意味が分かりますよね。

つまり、「色々なニーズに薄く広く応える」より「特定の人に深く刺さる」方が、統計的に見ても成功確率が高いってことなんです。

でも多くの起業家は、この逆をやってしまう。40%の人に深く愛されるより、80%の人に「まあまあ良いんじゃない?」って言われる方を選んじゃうんですよね。

まあ、気持ちは分からなくもないんですけど。


小規模事業者が勝つための「強みファースト」戦略

じゃあ、どうすればいいのかって話ですよね。

答えは「強みファースト」の考え方なんです。

強みファーストとは:
市場のニーズを追いかけるんじゃなくて、自分の最大の武器(強み)を見極めて、その武器が最も威力を発揮できる戦場(ニーズ)を選んで勝負すること。

従来の「ニーズファースト」:

  1. 市場のニーズを調査する
  2. 儲かりそうなニーズを見つける
  3. そのニーズに合わせて商品・サービスを作る

正しい「強みファースト」:

  1. 自分の強みを棚卸しする
  2. その強みを最大活用できるニーズを見つける
  3. そのニーズに一点集中する

なぜこっちの方がいいかって?

ニーズファーストの問題点:

  • 顧客のニーズって複雑すぎるんです
  • 高齢者向けも若者向けも…全部は無理
  • 結果、どれも中途半端になる
  • 強みがないから価格競争に巻き込まれる

強みファーストの利点:

  • 自分の得意分野だから、競合より良いものが作れる
  • リソースを集中投入できる
  • 「これなら誰にも負けない」って分野ができる
  • 差別化できるから高単価でも売れる

そして、自分の強みが明確になると、狙うべきニーズも見えてくるんです。

例えば、自分の強みが「IT知識×起業経験×地域密着」だとしたら、狙うべきニーズは「春日井周辺でAI・DX導入を検討してる中小企業経営者のニーズ」になる。

逆にニーズファーストだと:

  • とりあえず「AI市場は伸びてる」から参入
  • とりあえず「高齢者向けは需要ある」から開発
  • とりあえず「地方創生は国策」だから応募

全部「とりあえず」で、なぜ自分がそれをやるのかの根拠が薄いんですよね。

僕も「とりあえず」って、色々なニーズを追いかけてましたね。「流行ってるから」「儲かりそうだから」で。

でも結局、自分の強みと関係ないことばかりやって、どれも中途半端でした。まあ、当時は気づかなかったんですけど。


Room8で実践した「強みファースト」の実例

で、Room8はどうやったかって話なんですけど。

まず、僕の強みを整理しました:

  • IT知識: プログラミング、AI・DX関連の技術理解
  • 起業経験: 自分で事業を立ち上げた経験
  • 地域密着: 春日井という地域への理解、Webマーケティングスキル

で、僕がAI分野で行こうと決めたのも、「AIが儲かりそうだから」じゃなくて「AIが得意だから」なんです。

実際、他の人を見てるとよく分かるんですよ。「AI市場が伸びてる!」って参入してくる人いるけど、技術理解ゼロだったりする。逆に僕みたいに技術が分かる人は意外と少ない。

この強みを最大活用できるニーズって何だろう?って考えたんです。

都心にはAI・DXの専門家なんて腐るほどいるけど、春日井でちゃんと相談できる場所って、正直ほとんどない。

つまり「春日井周辺でAI・DX導入を検討してる中小企業経営者」のニーズは確実にある。でも供給者が少ない。

そこで戦術も見えてきました。

僕の場合、もともとWebマーケティングをやってたので、AIのワードでSEO狙いに行ったんです。

その結果:

  • 岩倉商工会青年部からAIセミナーの講演依頼
  • 地元の勝川大学でもセミナー依頼
  • あるプロジェクトのAI関連業務に携わることに

講演実績はそんなに多くないですけど、3回やらせてもらいました。

そして、ユーザーのアクティビティを見ると、Before/Afterでこんな感じです:

Before(今年1月): 30日間で989ユーザー

After(今年6月): 30日間で4,558ユーザー(354.4%増

要するに、自分の強み(Webマーケ)を使って、自分が勝てるニーズ(地域×AI・DX)で勝負したってことなんです。

でも、これもやった結果ダメな可能性もあったんです。SEOで上位を取ったけど問い合わせが来ない、なんてことも十分あり得る。

ただ、ダメならダメということが分かるわけじゃないですか。PDCAってそういうことですよね。「とりあえずニーズがありそうだから」だと、なぜダメだったのかも分からないまま終わっちゃう。

そして、ここからが面白いんですけど、Web制作業界を変革する戦略も見えてきたんです。

小規模事業者にとって、ホームページ制作30万円って結構ハードルが高いじゃないですか。でも僕、AIを使ったら30分で1ページ完成させられるんです。10ページあっても300分。

でも、300分で作ったホームページを30万で売ったら、お客さんにはぼったくり扱いされますよね。実際、そんなことできないし。

だったら発想を変えて、AIコミュニティを作って、お客さん自身がAIでサイトを作れるようにしてしまえと。Web制作の仕事は減るけど、AIコミュニティの会費収入につなげる。

老子の格言にもありますよね。『授人以魚 不如授人以漁』って。飢えてる人を見たら、魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教えろって話。

ホームページを作ってあげる(魚を与える)より、AIでホームページを作る方法を教える(釣り方を教える)方が、お客さんにとっても価値があるし、こっちとしても継続的な関係が築けるんです。

これって従来のビジネスモデルを根本から変えるアプローチなんです。今は低価格帯から始めてますけど、AIの進化に合わせて、どんどん上の価格帯にも影響していくでしょうね。

でも、これができるのは「AI・DX専門」って絞ったからなんです。

もし「Web制作もやってます」って言ってたら、「業者に依頼するなんて古い」なんて口が裂けても言えないですからね。目先の50万円の案件を断れないし。

その代わりにAIを進めるわけです。「作り方教えますよ」って。

強みを活かした一点集中だからこそ、業界全体を変革する戦略が取れるようになったんです。


今すぐ実践できる「強みファースト」の4ステップ

じゃあ、実際にどうやって「強みファースト」を実践すればいいのかって話ですよね。

僕がやってきた経験から、4つのステップにまとめてみました。

ステップ1:自分の強みを徹底的に棚卸しする

まず、自分が何ができるのかを整理することから始めます。

注意点: 「何でもできます」は強みじゃないです。むしろ弱みなので。

具体的には:

  • 技術的スキル: プログラミング、デザイン、マーケティング、営業…
  • 経験・知識: 業界経験、資格、特殊な知識…
  • 人脈・立地: 地域とのつながり、特定業界の人脈…

僕の場合は「Webマーケ」「起業経験」「春日井という地域」でした。

重要なのは組み合わせです。単体では普通でも、組み合わせると唯一無二になることがある。

ステップ2:その強みを最大活用できるニーズを探す

ここで初めて「ニーズ探し」をします。でも全市場を対象にするんじゃなくて、自分の強みが活かせる範囲で探すんです。

Sean Ellisの40%ルールを思い出してください。たくさんの人に薄く好かれるより、少ない人に深く愛される方が価値があるんです。

僕の場合:

  • 強み「Webマーケ + 起業経験 + 地域密着」
  • 探すニーズ「春日井周辺でAI・DX導入を検討してる中小企業経営者のニーズ」

全国のAI・DX市場を狙うんじゃなくて、自分の強みが最大活用できる範囲に絞ったんです。

ステップ3:そのニーズにピンポイントで届く戦術を決める

強みとニーズが決まれば、戦術も自然と見えてきます。

× ダメな例:

  • とりあえずSNSで発信
  • とりあえず異業種交流会に参加
  • とりあえずWebサイトを作る

○ 良い例:

  • デザイン得意な人 → 美容院向けに特化したWebサイト制作
  • 営業経験ある人 → BtoB企業向けの営業代行サービス
  • 地方出身の人 → 地元企業と都市部IT企業の橋渡し事業

要するに、「とりあえず」がダメなんです。SNSも異業種交流会もWebサイトも、それ自体は悪くない。むしろ自分の強みを活かすために、意図を持って活動することが重要なんですよね。

ステップ4:「やらないこと」を明確にする

これが一番難しいけど、一番大事なステップです。

目先の売上を断る勇気が必要になります。

僕の場合、Web制作の依頼が来ても基本的に断ってます。50万円の案件でも断る。

その代わりにAIを進めるわけです。「作り方教えますよ」って。

なぜかって?強みを活かした戦略に集中するためです。あれもこれもやってたら、結局どれも中途半端になってしまう。

絞ることで、本当に大きな戦略が取れるようになるんです。

まあ、最初は怖いんですけどね。でも、やってみると案外なんとかなるもんです。


結局、起業成功の秘訣は「強みファースト」だった

結局のところ、小規模事業者の成功って「儲かりそうなニーズ探し」じゃなくて「強みファースト」なんですよね。

今日のポイントをまとめると:

  1. 90%が失敗する現実を受け入れる – でも成功パターンは存在する
  2. 「ニーズ探し」から始めるのをやめる – 順番が逆
  3. Sean Ellis 40%ルールを意識する – 薄く広くより、深く狭く
  4. 強み→ニーズ→戦術の順番で考える – ニーズありきじゃない
  5. 「やらないこと」を決める勇気 – 目先の売上より長期戦略

一番大切なのは、「とりあえずニーズがありそうだから」をやめることです。

市場調査もニーズ探しも、全部意味のある作業です。でも自分の強みを理解してからやるべきなんです。

僕もRoom8を始める前は、「流行ってるから」「ニーズがありそうだから」で色々手を出して、結局どれも中途半端でした。でも「自分の強みを活かせるAI・DX分野」って絞ったからこそ、業界を変革する戦略も取れるようになったし、地元での講演依頼も来るようになった。

強みを起点にすることで、本当の戦略が見えてくるんです。

まあ、最初は不安になりますけどね。「この分野しかできません」って言うのは勇気がいる。でも、その勇気が結果的に一番の近道だったりするんですよ。


【お知らせ】
Room8では定期的にAI・DX活用セミナーを開催してます。「自分の強みを活かしたAI戦略」について相談したい方は、ぜひ一度お越しください。

Room8公式サイト | note

この記事を書いた人

コワーキングスペース 代表 鶴田 賢太

「AI系」起業アドバイザー 鶴田賢太です
春日井・名古屋で コワーキングスペース「Room8」 を運営しながら、起業家をサポートしています。

もともとは 簿記1級 から始まり、ITエンジニア、マーケティング、補助金、財務相談と、いろんな分野を経験してきました。でも、これからの時代は AI。今は 生成AI(ChatGPT・Claude・Geminiなど)を駆使して、起業を加速させる方法 を探求しています。

Webサイト制作は 100社以上、SEO対策も得意。補助金申請も 15回以上サポート してきました。けど、これからは AIをどう活用するかが、起業の成否を分ける 時代。Room8では、AI活用の相談も大歓迎です。

このブログでは、AI・IT・マーケ・補助金 など、起業に役立つ情報を発信していきます。AIを武器にしたい人、ぜひRoom8に遊びに来てください!