こんにちは、春日井コワーキングスペースRoom8オーナーの鶴田です!
最近は春日井や名古屋周辺で、企業向けにAI活用の相談を受けることが増えてきました。
「業務が属人化してて…」「引き継ぎが上手くいかなくて…」なんて話を聞くたびに、
僕が思うのは一つ──
それ、マニュアル作ってないからでしょ。
とはいえ、分かってるんですよ。マニュアルってめんどくさい。
書こうと思っても忙しいし、誰もやりたがらないし、書いても誰も読まないし、気づいたら古くなるし。
地味だし、目立たないし、評価されないし、やっても得しないし。
はい、やらない理由、出そろいました。
でもね、それでもやらなきゃ詰むんです。
誰かが辞めた瞬間に、「あの人にしか分からない仕事」がごっそり消えていく。
そして、「あの人がやってたから何とかなってた」が一斉に崩壊する。
でも今は、文章を整えてくれるAIがあります。
やり方さえ出せば、それをいい感じの手順書にしてくれる。
しかも、テンプレにそって。毎回同じフォーマットで。こっちが書くより全然マシに。
ただし──
情報がなければ、何もできません。
AIはエスパーじゃない。
「何をするか」「何に気をつけるか」「誰向けに伝えるのか」
──そういう情報を、人間側がちゃんと出してあげないと、そもそも整えようがない。
つまり、AIでマニュアルを作るってのは、
情報を出す(素材)+整え方を指示する(プロンプト)
この2つをセットでやること。
というわけで今回は、
「AIでマニュアル整備」って実際どうなの?何ができるの?どこまで使えるの?
という話を、まとめていきます。
AIでマニュアルを整えるとはどういうことか?

まず勘違いしがちなのが、「AIにお願いすれば勝手にマニュアルを作ってくれるんでしょ?」って発想。
そんな都合のいい話、あるわけない。
AIは“整える”のが得意なツールであって、
“内容を知ってる誰か”ではない。
つまり、「この作業の手順ってこうで、ここが注意点で」みたいな中身を、人間が出す必要がある。
で、そこまで出せば、あとはAIがめっちゃ丁寧に整えてくれる。
番号を振ってくれて、文章を読みやすくしてくれて、「誰が読んでも分かるように」してくれる。
いわば文章の整形外科医みたいなもの。
なので、「AIでマニュアルを作る」というのは──
何もないところから自動で生まれる魔法じゃなくて、
情報をもとに形にする“整理屋”を雇う感覚に近い。
要点はこれだけ:
- 中身は人が出す
- 整えるのはAIがやる
- ちゃんと渡せば、それっぽい手順書になる
ここをすっ飛ばして「AIが何とかしてくれる」と思ってると、
中身スカスカな“それっぽい風”のマニュアルが量産されて、結局現場で誰も使わない。
そういうのはもう十分、って人のために、次はAIで「何ができるか」を紹介する。
AIを使うと何が便利になるのか?

マニュアルをAIで整えると何が変わるのか。
簡単に言えば、「書く」という面倒な作業を丸ごと投げられるようになる。
頭の中にある「やり方」を、メモでもいいし、喋って文字起こししたものでもいいから、とにかく出す。
それをAIに渡せば、「手順1」「手順2」みたいに、いい感じに並べてくれる。
文章が苦手とか、誰にでも伝わるように書けないとか、そんな悩みはどうでもよくなる。
それだけじゃない。
AIを使えば、こんなメリットがある。
- 形式が統一される
Aさんが書いた手順とBさんが書いた手順で、言い回しがバラバラ──みたいな事故が減る。
どれも“同じフォーマット”になるから、読む側もストレスがない。 - 書き始めるハードルが下がる
「白紙のドキュメントに向かって“さあ書こう”」が消える。
とりあえず思いついたことを箇条書きすれば、整えてくれる。 - 思考の整理にも使える
手順にすることで「これって順番逆の方がいいかも」とか「この作業いらないんじゃ?」みたいな改善ポイントも見えてくる。
書くことで見えることがある──でも、書くのはAI。 - 記録が“資産”になる
今までは「○○さんに聞けば分かる」で済んでいたものが、ちゃんと記録になって残る。
これが地味にでかい。人が辞めても引き継げる、ってやつ。
つまり、
「面倒で誰もやらなかったこと」が、現実的な工数で回せるようになる。
これがAIを使う最大の価値。
マニュアルって本来、みんながやってる“やり方”を共有するためのものなのに、
その共有の仕組みがないせいで、また同じ質問が繰り返される。
それ、もうやめよう。次は「何が必要か」の話。
マニュアルを作るために必要なのは「情報」と「指示」

AIにマニュアルを作ってもらうには、必要なものが2つしかない。
それは──
- 情報(何を伝えたいか)
- 指示(どうまとめたいか)
この2つが揃えば、AIはちゃんと形にしてくれる。
逆に言えば、このどっちかが抜けてると、出来上がるのは“スカスカのテンプレっぽい何か”。
1. 情報(=中身)
作業の流れ、操作の手順、注意点、例外パターン──
その仕事をやってる人の頭の中にある「やり方」こそが、マニュアルの素材。
「AIに聞いたら出てくるでしょ?」と思ってる人は、たいていこの素材を持ってない。
当然、出てくるのは「なんか聞いたことある風な当たり障りないやつ」。
それじゃ現場で使えない。
2. 指示(=プロンプト)
情報が集まっていても、「どうまとめるか」の指示がないと、AIは迷子になる。
たとえば、
「初心者にも分かるように順番に説明して」とか
「箇条書きで3つにまとめて」とか
「この内容をマニュアル形式に整えて」とか。
プロンプトっていうと難しく聞こえるけど、要するに“どう仕上げたいか”を伝えること。
AIは、情報を料理するのは上手です。
冷蔵庫にジャガイモ、にんじん、豚肉、玉ねぎが入っていれば、何かしらそれっぽい料理──例えば「肉じゃが」とか「カレー」とか──を作ってくれます。
でも、「何でもいいや」で満足できるならそれでいいんですけど、
「カレーが食べたい」なら、それを伝えないといけない。
マニュアルも同じで、
「何を伝えたいのか」「誰向けにまとめたいのか」まで含めて伝えないと、出てくるのは“それっぽいけど使えない何か”になる。
つまり、
材料(情報)を出して、「どう仕上げたいか」(指示)を伝えること。
それが、AIにマニュアルを作ってもらうときに必要なことです。
それと同じで、
マニュアル整備にAIを使うっていうのは、材料(情報)とレシピの方向(指示)をセットで出すこと。
次はそれを、レベル別にどう実践していくか?の話。
活用レベル別で考えるマニュアル整備

生成AIを使ったマニュアル整備は、慣れてくるとどこまでも深掘りできるんですが、最初から全部やろうとすると、たいてい挫折します。
なのでここでは、「できることベース」でレベル分けしてみます。
上級を目指す必要はありません。初級で止まってても、ちゃんと意味あるので安心を。
初級:ChatGPTにそのまま整えてもらう
マニュアルを作るには、「情報(中身)」と「指示(どうまとめるか)」が必要です。
初級では、この2つをプロンプトの中にまとめて書いて、ChatGPTに直接渡します。
つまり、ChatGPTのチャット欄ひとつで完結するやり方です。
🔧 プロンプト例:
あなたは業務マニュアルを作成する担当者です。
以下の作業内容を、誰が読んでも実行できるように、手順書形式で整理してください。
【作業内容】
・月末に請求書を作成する
・顧客ごとにテンプレートが異なる
・テンプレートはGoogleドライブの「請求書テンプレ」フォルダにある
・請求書はPDFに変換してメールで送る
・たまに添付ミスがあるため注意している
💡 解説:
このプロンプトには、マニュアルを作るために必要な2つの要素が含まれています。
- 情報(中身)
- 作業の目的:「月末に請求書を作成する」
- 実際の手順に必要な要素:「顧客ごとにテンプレートが違う」「PDFで送る」
- つまずきやすいポイント:「テンプレートの保存場所」「添付ミスに注意」 - 指示(整え方)
- ChatGPTに“どんな形でまとめてほしいか”を伝える文言
→「誰が読んでも実行できるように」「手順書形式で整理してください」
さらに冒頭で役割(業務マニュアルを作成する担当者)を与えることで、
AIが「誰目線で、どんなスタイルで」出力すればいいかを理解しやすくなります。
プロンプトをこうして構成することで、
ChatGPTは単に情報を並べるのではなく、意図に沿った整ったマニュアルとして仕上げてくれます。
🧾 出力例(ChatGPTによる整形結果):
了解しました。以下に、誰が読んでも迷わず実行できるレベルで整理された手順書を作成しました。必要であれば、図解付きのマニュアル化も可能です。
了解しました。以下に、誰が読んでも迷わず実行できるレベルで整理された手順書を作成しました。
必要であれば、図解付きのマニュアル化も可能です。
各顧客に対して、正しいテンプレートを使って請求書を作成し、PDFでメール送付する。
毎月末
※原則、当月の最終営業日までに完了させること
・請求対象の顧客リストを確認(スプレッドシート等)
・テンプレートがGoogleドライブに揃っているか確認
・Google ドキュメント
・Google ドライブ(「請求書テンプレ」フォルダ)
・PDF出力機能(Googleドキュメントの「ファイル」→「ダウンロード」→「PDFドキュメント」)
・メール(Gmailなど)
Step1:テンプレートの確認と選定
1. Googleドライブを開く
2. 「請求書テンプレ」フォルダを開く
3. 顧客名に対応したテンプレートを選ぶ(ファイル名で判別)
Step2:請求書の作成
1. テンプレートをコピーして自分の作業用フォルダに保存
2. ファイル名を「〇〇株式会社_2025年5月請求書」などに変更
3. 金額・作業内容など必要項目を入力・修正
4. 入力ミスがないか確認
Step3:PDFに変換
1. Googleドキュメントから「ファイル」→「ダウンロード」→「PDFドキュメント(.pdf)」を選択
2. ダウンロードされたPDFファイルを開いて内容確認
Step4:メールで送付
1. 顧客宛てのメールを新規作成
2. 件名例:「【Room8】2025年5月分 請求書のご送付」
3. メール本文例:
ーーーーーーーーーーー
〇〇株式会社
いつもお世話になっております。Room8の〇〇です。
2025年5月分の請求書をお送りいたしますので、ご確認お願いいたします。
ご不明点がありましたらご連絡ください。今後ともよろしくお願いいたします。
ーーーーーーーーーーー
4. PDFファイルを添付(※添付ミス防止のため、**送信前に開いて確認**)
5. 送信
・顧客ごとにテンプレートが異なるため、取り違えに注意すること
・過去にPDFの添付漏れが発生しているため、送信直前の確認を徹底
必要であれば、この手順書をPDFや社内Wiki用に再整形できます。
印刷用・配布用のテンプレ付きマニュアル化にも対応可能です。
出力された結果を見ていかがでしょうか?
これだけでも、けっこうちゃんとしたマニュアルになっていると思います。
もちろん、「もっと詳しくしたい」「別の視点で整理したい」と思ったら、
追加の情報や、より具体的な指示を与えることでさらにブラッシュアップできます。
足りないと感じたところがあるなら、
それはAIの精度の問題ではなく、こちらが渡した情報や目的の伝え方が足りなかっただけかもしれません。
AIは整えるプロです。
ちゃんと素材とゴールを渡せば、ちゃんと仕事します。
中級:録音・音声・動画を元に整える
作業中にいちいちメモを取るのは面倒。
話し言葉で説明すれば終わるのに、文章にするのが手間。
そういう人におすすめなのが「音声や動画からテキストを作る」アプローチです。
つまり、録音して → 文字起こしして → ChatGPTで整えるという流れ。
🛠 使える外部ツール
- Gladia(グラディア)
精度が高く、話し言葉もちゃんとテキスト化される。複数話者の区別も可能。 - Whisper(OpenAI製)
オープンソースで無料。精度も高く、簡単に試せる。 - YouTubeの自動字幕機能
Zoom録画や解説動画をYouTubeにアップすれば、自動で字幕(テキスト)を生成してくれる - Notta / otter.ai
議事録アプリ系。音声アップロードで文字起こしし、そのまま共有もできる。
🧩 実際の流れ(例)
- Zoomやスマホで業務内容を録音
- 文字起こしツールにかけてテキスト化
- 出てきたテキストをChatGPTに渡してプロンプトで整形
以下はZoomミーティングで説明した作業内容の書き起こしです。
これを読みやすい手順書にまとめてください。
📌 ポイント
- 喋るだけで“マニュアルの素材”ができるので、特に現場系の仕事に相性がいい
- 途中で脱線してもOK。ChatGPTが要点だけ拾って整えてくれる
- 書くのが苦手でも、「話す」ならできるという人にはベストな選択肢
テキスト化された素材があるだけで、ChatGPTは一気に働きやすくなります。
口で説明 → テキスト化 → 整形
この流れが回り出せば、マニュアル作りの負担はかなり減ります。
次は、こういった素材を人の手で集めずに仕組み化するという上級編に進みます。
上級:ツールと連携して“仕組み化”する
ChatGPTのAPIを使えば、他のツールと連携して、
マニュアル作りを自動で回せるような仕組みもつくれます。
人が毎回「まとめて」とお願いしなくても、
日々のやり取りや記録から、自動で整った手順書やQ&Aが生まれる。
ここまで来ると、もう“マニュアルを書く”という概念が変わってきます。
💡 たとえば、こんな活用ができます
- Googleフォーム + ChatGPT API + Google Docs
日報や作業報告をフォームで入力するだけで、自動でマニュアル化 → Googleドキュメントに保存 - Notion + ChatGPT API
Notionに書かれた作業メモや記録から、ChatGPTが要点をまとめて手順書を生成 - メール + ChatGPT API
お問い合わせ内容を自動で分類・整理 → よくある質問と対応マニュアルを生成 - Slack + ChatGPT API
やりとりの中から重要な情報だけを抽出 → Q&A形式でまとめてWiki化 - 音声ファイル + 文字起こし + ChatGPT
営業やサポートの録音をもとに、トークスクリプトや対応フローを整形
🧠 ポイント
- 書くのではなく、「情報が勝手に整っていく」仕組みができる
- 情報の入力(インプット)を整えれば、出力(アウトプット)も自動化できる
- 属人化ややり直しが減り、「情報が残るチーム」になる
こういった仕組みを自分で組める人は、どんどんやればいい。
逆に、「うちでもこういうことできる?」という相談でも全然OK。
マニュアルは一つの型じゃなくて、会社ごとに必要な形がある。
だからこそ、「作り方」よりも「どう活かしたいか」を考えることが一番大事です。
まとめ:AIを使えば、マニュアル作りももっと気楽にできる
マニュアルって、なんだかんだ後回しになりがちな仕事です。
書くのが面倒、うまくまとまらない、何を書けばいいか分からない──
そんな理由で放置されている現場も多いと思います。
でも、今はAIがあります。
情報さえ渡せば、構成を整えて、読みやすく、わかりやすい形に仕上げてくれる。
つまり「マニュアルを書く」のではなく、「マニュアルを整えてもらう」ことができる時代です。
今回紹介した内容も、決して“上級編までやらなきゃ意味がない”という話ではありません。
年に1回しか作らないようなマニュアルなら、ChatGPTとのやりとりだけでも十分です。
大事なのは、「書けるかどうか」ではなく、「伝える意志があるかどうか」。
まずは、初級の方法から試してみてください。
「こういうことできるかな?」という軽い相談でも大歓迎です。
あなたの仕事やチームに合ったマニュアルの整え方、一緒に考えていきましょう。