どうもこんにちは、ビジネスプロデューサーの大西 隆貴(たかき)です。
早速ですが…覚えているでしょうか、この言葉を。
「大西くんのサイエンス系は面白い!さすが元院生」
そう、忘れもしない、前々回の記事(リンク先参照)を書いたとき、我らがRoom8オーナーの鶴田さんからいただいたお褒めの言葉ですね(笑)
というわけで今回は…
コーヒーブレイクがてら、今度こそ(調子に乗って)その続編を書いてみることにします。
ズバリ、テーマは…
人工知能と物理学の意外な関係とは?
です。
前々回の記事の最後で提示した話、覚えておりますでしょうか?
実は、意外にも人工知能のモデルには、物理で発展した考え方が取り入れられているのです。
僕自身、初めてこのことを知った時は衝撃でした。
「え!?生き物の脳みそと物理にいったいどんな関係が!?」
一応、大学受験レベルくらいには生物学の知識がありましたので、余計にその関係性が理解できず、ただただ驚きと好奇心でいっぱいだった覚えがあります。
では一体、物理学のどの分野と関係があるのか?
ひとくちに「物理学」と言っても、「素粒子」と呼ばれる極めて小さいサイズの物質から、果ては宇宙そのものまで、取り扱う対象はまさしく千差万別。
突然ですが、ここで1つクイズです!
直感で構いませんので、考えてみてください!
Q.次のうち、人工知能ともっとも関係性が深いのは、どの分野でしょう?
- 素粒子
原子の構成要素である素粒子の性質を調べる分野。 - 物性
物質の持つ性質(電気の通しやすさ、磁気の強さなど)を調べる分野。 - 流体
水や空気の流れについて調べる分野。 - 相対性理論
いわずもがな、かの有名なアルバート・アインシュタインが提唱した、重力に関する理論。
ブラックホールの研究もこの分野。 - 宇宙
ここで言う「宇宙物理学」とは、惑星や銀河の成り立ちを調べる分野。
3…2…1…
はい、そこまで!
気になる正解は…
物性
でした!
見事正解できましたか?
(まあ、どれも意外だと思われそうな選択肢だったとは思いますが…笑)
とは言っても、物理になじみのない方は「?」となっていると思いますので、ここで「物性物理学」について少しまとめておきましょう。
「物性物理学」って??
まあ、この分野で分かりやすい現象といえば…
何と言ってもこれです、これ。
いわゆる「超伝導」という現象ですね。
あとは…これもそうですね。
もしかしたら、理科の実験でもやったことがあるかもしれません。
そう、「結晶」ですね。
こんな感じで、物質の様々な性質を調べていくのが、「物性物理学」です。
この分野が人工知能に結びつくなんて、びっくりだとは思いませんか?(笑)
世の中、本当に分からないものですよねえ…。
余談ですが、僕が大学4年生の時に配属された研究室も、この「物性」を研究する場所でした。
ちなみに、この分野は非常に実験のイメージが強いかもしれませんが、素粒子や相対性理論のように、紙とペンで数式をゴリゴリ解いて研究を進める研究室(いわゆる理論系)もちゃんとあります。
(僕はどちらかというと実験が苦手だったので(汗)、ひたすら数式をいじくり回していました)
さて、いよいよ本題に入っていきましょう。
物質の性質を調べる「物性物理学」の知識が、いかにして人工知能に結びつくのか?
(詳しく書くと誰も読まなくなってしまうので、ここからは専門家に「いい加減なことを書くな!」と怒られるのを承知でざっくりと説明していきます)
ちょっと難しい話になりますが、この分野で研究されている物質のモデルに「スピングラス」というものがあります。
要は、不純物を混ぜた合金です。
ご存じの方もいるかもしれませんが、金属内には「スピン」というミクロな磁石たちがあって、これの上下を全員同じ向きに揃えるとよくある磁石になります。
そしてスピングラスには、このスピン君たちが場所によって上だったり下だったりめちゃくちゃな方向を向く、という性質があるんですね。
ということは、合金内では、あっちこっち向いたスピン君たちの磁力が互いに複雑な影響を及ぼし合っている訳です。
さあ、ここで前々回の記事でご紹介した「ニューロン」君に再度ご登場いただきましょう!
(忘れてしまった方は前々回の記事を参照)
「なぜこのタイミング?」
と思いましたか?(笑)
実は、さりげなくヒントを出しています。
カンのいい方、気づきましたか?
…そうです、スピン君です。
先ほど書いた通り、スピン君は上を向いたり下を向いたりします。
そういえば前々回の記事によると、ニューロン君は確か手を挙げ下げするんでしたね。
そしてスピン君は、自らの磁力によって他のスピン君に影響を及ぼし合うという性質を持ちます。
対して、ニューロン君は他のニューロン君と手をつなぐんでしたね。
「影響を及ぼし合う」=「手をつなぐ」と考えると…似ていませんか、ニューロン君とスピン君?
そう、実際に数式的にも、ニューロン君とスピン君は同じような取り扱いができるのです。
このことに気づいた偉大なる物理学者の方々が、このスピングラスの考え方を脳の研究に持ち込むと…
できちゃいましたよ、例のニューラルネットワークが。
(「ニューラルネットワーク」については前々回の記事を参照)
かくして、物理学の知識から、いま話題の人工知能のモデルができあがったのです。
上でもちらっと言いましたが…世の中、本当に分からないものですよねえ。
このように、物理学に限らず、ビジネスもですが、全然違う分野や業界の知識が、思わぬ役に立つことがあります。
もし、この記事をご覧のあなたに行き詰まっていることがあるとしたら、関係ない知識が突破口になることが…あるかも?
それでは、またお目にかかりましょう!
ありがとうございました!
P.S. 本業そっちのけでどうして人工知能のことばっかり書いているか、気になっている人はいるでしょうか?(笑)
そのうち、種明かししますね…。
参考文献:PDFファイル「従来の物理の枠を越えて 西森研究室~物性物理学専攻」東京工業大学教授 西森 秀稔著
http://pdf.landfaller.net/45/45-2.pdf
※日本の物理学者の中において、ニューラルネットワーク研究の第一人者といってよいと思います。
僕も学生の頃、この先生の教科書にお世話になりました。