「もうちょっと準備してから…」って5年言ってない?ドラッカーなら鼻で笑うやつ

こんにちは、春日井コワーキングスペースRoom8オーナーの鶴田です。

最近、Room8に起業相談に来る人たちから、テンプレートのように聞く言葉があります。「ビジネスプランをもうちょっと完璧にしてから」「競合調査をもう少し詳しくやってから」「資金をもっと貯めてから」。

要するに、全員が同じ起業セミナーでも受けてきたんですかね。判で押したように同じことを言うんです。

表面的には前向きに聞こえますが、理由を掘り下げていくと、結局は同じところに辿り着きます。失敗への恐怖です。完璧でないものを世に出すことへの不安。まあ、気持ちはわかりますけどね。

実は僕も同じタイプだったりします。Room8の新サービスを追加する時とか、「これでいいじゃん」と思ってても、いざ実行しようとすると妙に抵抗があるんです。最近だとAI講師の依頼が来た時も、頭では「やればいいじゃん」なのに、返事するまでに無駄に悩みました。まあ、結局やりましたけどね。

この「頭ではわかってるのに体が動かない」現象、皆さんにも覚えがあるんじゃないでしょうか。

でも面白いことに、この「完璧主義という名の逃避」って、50年以上前からピーター・ドラッカーが散々警告していたことなんですよね。そして現代のキャリア理論の権威、スタンフォード大学のジョン・クランボルツも、まったく同じ結論に到達している

つまり、起業セミナーで教わる「失敗回避術」の99%は、学問的に否定された迷信なんです。セミナー講師の大半が起業経験ゼロという現実を考えれば、まあ当然ですが。

ちなみに、このドラッカーシリーズの前回記事では、ドラッカーが現代の起業家に伝えたい3つの真実現代起業家が誤解しているドラッカーの教えについて書きました。今回はその完結編です。

今日は、起業セミナーでは絶対に教えてくれない、ドラッカーの不都合な真実をお届けします。準備はいいですか?完璧じゃなくても、始めちゃいますよ

起業準備で陥る完璧主義の罠

起業相談でよく出会う光景があります。100ページのビジネスプランを練り続ける人競合調査で数ヶ月を費やす人リスクの洗い出しで身動きが取れなくなる人

みんな真面目で勉強熱心です。でも共通する問題があります。「完璧になったら始める」と思っていること

ドラッカーが一貫して警告していたのは、まさにこの「完璧主義という名の行動阻害」でした。

「行動しないことこそが最大のリスクである」。これは、ドラッカーが変化の時代に「機会を逃すことの危険性」を語った文脈から来ています。

また『マネジメント』では「計画は重要だが、実行がなければ意味がない」と明言しています。完璧な計画を追い求めるより、実行して結果を出すことが優先だと。

『イノベーションと起業家精神』でも「イノベーションは、計画されたものではなく、試行錯誤の結果生まれる」と述べています。不完全な一歩でも踏み出すことが大事なんです。

特に注意すべきは、準備期間が長くなればなるほど、市場の変化に取り残されるリスクです。あなたが完璧な計画を練っている間に、競合は新しいサービスをリリースし、顧客のニーズは変化し、市場環境は激変している。

結果として、完璧な計画が完全に無意味になることも珍しくありません。

次に、具体的にどんな「完璧主義の罠」があるのか見ていきましょう。

ビジネスプラン作成で失敗する理由

ドラッカーが指摘した「計画の本質」

「予測は当たらない」「計画は変更されるためにある」「機会は計画の外からやってくる」

これらはドラッカーが実際に言った言葉です。計画は重要ですが、計画通りにいくことの方が稀だということを示しています。

多くの起業家が陥る問題は、計画を目的化してしまうことです。計画は手段であり、実行と修正を繰り返すためのベースラインに過ぎません。

統計が証明する「予測の限界」

スタンフォード大学のジョン・クランボルツが20年間にわたって追跡調査した結果、驚くべき事実が判明しました。成功したキャリアの8割は、予想外の偶然によって決まっている

どんなに完璧な計画を立てても、成功の要因の大部分は計画外の出来事なんです。この発見は、計画性偶発理論として体系化されています。

成功企業が証明する「計画外」の価値

実例を見てみましょう。

Amazonのジェフ・ベゾス、最初は「オンライン書店」でした。今や何でも売ってるプラットフォームですが、当初のビジネスプランに「クラウドサービス」はありませんでした。AWSは社内インフラを効率化するために作ったシステムが、顧客ニーズと合致して事業化されました。

Twitterは、ポッドキャスト会社の社内コミュニケーション用ツールでした。メインサービスが失敗して、副産物だったツールが世界的サービスになりました。

Room8も最初は単純なコワーキングスペースでした。利用者との対話を重ねる中で、自然とAI相談やセミナー事業が生まれました。当初の計画にはありませんでした。

計画性偶発理論が示す成功要因

クランボルツは、成功の要因として5つの要素を挙げています:好奇心・持続性・柔軟性・楽観性・冒険心。これらは全て「計画を柔軟に修正する能力」に関連しています。

つまり、重要なのは完璧な計画ではなく、変化に対応できる柔軟性なんです。

実行しながら学ぶアプローチ

計画は地図のようなもの。目的地に向かうための参考として使い、途中で道が変わったら躊躇なく修正する。

100ページの詳細な計画を作るより、シンプルな計画で早く始めて、顧客の反応を見ながら調整していく。現代のビジネス環境では、これが最も現実的なアプローチです。

分析に時間をかけすぎる危険性

分析が目的化する典型パターン

Room8での起業相談で頻繁に聞く言葉があります。「もう少し分析してから」

競合調査、市場分析、業界研究、トレンド調査…。どれも大切に見えますが、多くの場合、分析が目的化してしまっている状態です。

典型的なパターンがこれです:

  1. 競合のサービスを調べる
  2. 「市場規模も見なきゃ」
  3. 「業界動向も重要だ」
  4. 「海外事例も参考にしよう」
  5. 「専門レポートも読まなきゃ」
  6. 気がつけば数ヶ月経過

この間に何が起きているかというと、市場は変化し続け、競合は新しいサービスをリリースし、機会は他の誰かに取られているんです。

2500年前から変わらない真理

「巧遅は拙速に如かず」

孫子が2500年前に言ったこの言葉は、現代のビジネスでも全く変わらない真理です。完璧で遅いより、不完全でも早い方が価値がある。

ドラッカーも現代で同じ警告をしていました。『イノベーションと起業家精神』では「イノベーションは、計画されたものではなく、試行錯誤の結果生まれる」と述べています。

つまり、完璧な分析より不完全な実行。これが古今東西の成功法則なんです。

分析している間に機会は逃げる

分析に時間をかけすぎる最大の問題は、機会損失です。

あなたが完璧な市場分析をしている間に:

  • 競合は新しいサービスをリリースしている
  • 顧客のニーズは変化している
  • 市場環境は激変している
  • 他の起業家が同じアイデアで先行している

結果として、どんなに完璧な分析も意味がなくなります。

実行しながら学ぶアプローチ

Room8も最初から完璧な分析をしたわけではありません。「春日井でこういう場所があったらいいな」という漠然としたアイデアから始めて、実際に運営しながら形を作っていきました。

AI講師の依頼が来た時も、詳細な市場分析なんてしませんでした。「やってみよう」で始めて、実際の反応を見ながら改善していっただけです。

分析の正しい使い方

分析が不要というわけではありません。問題は時間のかけ方と優先順位です。

推奨アプローチ:

  • 最低限の分析で全体像を把握
  • すぐに実行開始
  • 実行しながら継続的に調整

『マネジメント』でドラッカーが言った通り「計画は重要だが、実行がなければ意味がない」のです。

分析に1ヶ月かけるなら、1週間で概要を把握して、残り3週間は実行に充ててください。その方がよっぽど価値のあるデータと経験が得られます。

起業成功の秘訣は試行錯誤にある

成功の本質は試行錯誤にある

成功に必要なのは試行錯誤です。一見華々しく大成功していて失敗など遠い存在のように思える、有名な起業家でも、その成功の裏には無数の失敗を抱えていることが殆ど。

つまり10回失敗して1回成功しているみたいなことが殆どで、これが成功者のパターンです(10回かどうかは置いといて、あるいはもっと多くの失敗かもしれません)。

ドラッカーが『イノベーションと起業家精神』で指摘していたのは、まさにこの点でした。「イノベーションは、計画されたものではなく、試行錯誤の結果生まれる」

好きな人へのプレゼント選びと同じ構造

これって、好きな人へのプレゼント選びと同じ構造なんです。

分析型のアプローチ:

  • 相手の好みを徹底的にリサーチ
  • SNSを遡って好きなブランドを調査
  • 友達にヒアリング
  • 完璧なプレゼントを選ぶまで何ヶ月も悩む
  • 結果:もう既に持ってた、どんだけ考えても計画通りには行かない

試行錯誤型のアプローチ:

  • とりあえず小さなプレゼントをしてみる
  • 反応を見る
  • 喜ばれたら同じ方向性で次を考える
  • ダメだったら違うアプローチを試す
  • 結果:相手の好みがリアルタイムで分かる

どちらが相手の本当の好みを知れるでしょうか?圧倒的に後者ですよね。

そして重要なのは、相手を喜ばせるのって一発勝負じゃないことです。プレゼントが喜ばれないことはあっても、それで嫌われることはない。むしろ「考えてくれてる」ことが伝わります。ダメだったら次があるから、安心して試せる。当たりを探していけばいいだけです。

ビジネスでも全く同じ構造

「この商品は売れるだろうか?」

この問いに対する答えを得る方法も2つあります:

分析アプローチ:

  • 市場調査を数ヶ月
  • 競合分析を詳細に
  • 顧客インタビューを重ねる
  • 完璧な商品を作り上げる

試行錯誤アプローチ:

  • とりあえず最小限の商品を作る
  • 実際に売ってみる
  • 市場の反応を見る
  • 反応に応じて修正する

どちらが正確な答えを得られるでしょうか?圧倒的に後者です。

ビジネスでも一発勝負じゃありません。小さく始めれば、失敗しても致命傷にはならない。失敗してもやり直せるし、良い商品を作れば売れる。だから安心して試行錯誤しましょう!

市場が教えてくれる真実

市場の反応が一番正確な「分析結果」なんです。

どんなに完璧な市場調査をしても、実際に売ってみないとわからないことが山ほどあります:

  • 本当に顧客が価値を感じるか
  • 適正な価格はいくらか
  • どんな改善が必要か
  • 想定外のニーズはないか

Room8のAI関連事業も、最初の計画は、最初はブログを書いてSEOを上げて、コンサルを受けたい人が問い合わせしてくる計画でした。

ところが実際には、コンサル依頼ではなく講師依頼が来ました。その講師依頼を受けたことで別の講師依頼も来て、「講師を挟んだ方がコンサルに繋がりやすいかな」と計画を修正しました。

これがまさに計画性偶発理論です。AI分野で準備していたからこそ、予想外の講師依頼を活かして、最終的に本命のコンサル事業により良いルートを見つけることができた。

結果重視の改善サイクル

重要なのは「早く始める」ことではありません。「結果を見て継続的に改善する」ことです。

ドラッカーが『マネジメント』で一貫して主張していたのは、成果主義でした。どんなに良いアイデアでも、結果が出なければ意味がない。

効果的な改善サイクル:

  1. 小さく始める:致命傷にならない規模で
  2. 結果を測定する:数字で客観的に評価
  3. 原因を分析する:なぜその結果になったのか
  4. 改善策を実行:具体的なアクションを取る
  5. 再び結果を測定:改善効果を確認

このサイクルを高速で回すことで、最初は「不完璧」だったものが、最終的に「完璧」に近づいていきます。

実行して結果から学ぶ

Room8も最初から完璧だったわけではありません。利用者の反応を見て、サービスを少しずつ改善し、新しいニーズに応えて事業を拡大してきました。結果が全てを教えてくれます。

ドラッカーが本当に言いたかったのは「分析して完璧にするより、実際に試して結果から学べ」ということです。

市場は最高の先生です。分析に時間をかけるより、市場に聞いて、その答えをもとに改善を重ねてください。

まとめ:知識を行動に変えよ

ドラッカーの真のメッセージ

今回お伝えした3つのポイントを振り返ってみましょう。

1. 起業準備で陥る完璧主義の罠
「行動しないことこそが最大のリスク」。準備という名の現実逃避に陥っている間に、市場は変化し、機会は他の誰かに取られていきます。

2. ビジネスプラン作成で失敗する理由
「予測は当たらない」「計画は変更されるためにある」。クランボルツの研究でも証明された通り、成功の8割は偶然です。完璧な計画より、柔軟な実行力が勝負を決めます。

3. 起業成功の秘訣は試行錯誤にある
「イノベーションは試行錯誤の結果生まれる」。10回失敗して1回成功、これが本当の成功者のパターンです。分析より実践、計画より検証。

50年変わらない普遍的な真理

面白いことに、これらの教訓は50年前のドラッカーの時代から変わっていません。むしろ、変化のスピードが加速した現代では、その重要性がさらに増しています。

ドラッカーが『マネジメント』で言った「知識は行動によってのみ価値を持つ」という言葉が、すべてを物語っています。

起業セミナーで教わる「失敗回避術」の99%は、時代遅れの迷信です。本当に必要なのは、知識を行動に変える実行力。そして、結果から学んで改善し続ける成果主義です。

実際にやってみて分かったこと

僕自身、効率を重視するタイプです。楽したいというか、無駄な行動はしたくない。「行動して失敗したら時間が無駄になりそう」みたいに考えがちなんです。新しいサービスを始める時も「本当に客ふえるか?」と躊躇してしまう。

でも、実際に動いてみると、「分析してる時間の方がよっぽど無駄だった」と気づくんです。やればすぐに分かる事を時間掛けて分析するので。

AI講師の依頼が来た時も、詳細な準備なんてしませんでした。「やってみよう」で始めて、今では重要な事業の一部になっています。

準備された偶然を掴むために必要なのは、完璧な計画ではありません。適度な準備と、機会を掴む実行力です。

成果こそが全て

でも、ここで勘違いしてはいけません。ドラッカーが言う「成果」とは、「良い結果を出すこと」ではありません。

成果とは、良い結果も悪い結果も含めて「成果」です。成功も失敗も、どちらも価値のある成果。成功からは「何がうまくいったか」を学び、失敗からは「何がダメだったか」を学ぶ。

そして、その成果は市場にあります。分析や計画からは仮説しか得られませんが、市場に行けば必ず成果(結果)が返ってきます。

唯一無価値なのは、何もしないこと。行動しなければ市場からの成果が得られず、学習材料がゼロになってしまいます。


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Spring8コワーキングスペースRoom8について詳しくは:
https://www.room8.co.jp/

このシリーズの他の記事や起業・AI活用のヒントは:
https://note.com/room8inc

この記事を書いた人

コワーキングスペース 代表 鶴田 賢太

「AI系」起業アドバイザー 鶴田賢太です
春日井・名古屋で コワーキングスペース「Room8」 を運営しながら、起業家をサポートしています。

もともとは 簿記1級 から始まり、ITエンジニア、マーケティング、補助金、財務相談と、いろんな分野を経験してきました。でも、これからの時代は AI。今は 生成AI(ChatGPT・Claude・Geminiなど)を駆使して、起業を加速させる方法 を探求しています。

Webサイト制作は 100社以上、SEO対策も得意。補助金申請も 15回以上サポート してきました。けど、これからは AIをどう活用するかが、起業の成否を分ける 時代。Room8では、AI活用の相談も大歓迎です。

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