こんにちは、春日井コワーキングスペースRoom8オーナーの鶴田です!
昨日、「強みファースト」で起業戦略を立てる話を書いたんですが、今日早速「僕の強みって何だと思いますか?」って質問をいただきました。
あー、やっぱりこの質問来ましたか。
別に悪い質問じゃないんですよ。むしろ自分を客観視しようとする姿勢は素晴らしいと思います。ただ、この質問をする人の多くが、実は起業で一番大切なことを見落としているんですよね。
「個人の強み」と「事業の強み」は、全く別物なんです。
今日は、なぜ「僕の強み」から始める起業が上手くいかないのか、そして本当に必要な「強み」とは何なのかを、Room8での相談事例を交えながらお話しさせていただきます。質問をくださった方にも、きっと参考になるはずです。
サラリーマン脳と起業家脳の根本的な違い
Room8で起業相談を受けていると、こんな答えが返ってくることが多いんです。
- 「僕はExcelが得意です」
- 「コミュニケーション能力があります」
- 「真面目で責任感が強いです」
正直言って「それで?」って感じなんですよね。
サラリーマン脳:「自分の能力」を売る発想
これって典型的な「サラリーマン脳」の発想なんです。
サラリーマンの世界では、自分の能力やスキルを会社に提供して、その対価として給料をもらいます。だから「僕にはこんな能力があります」という自己PRが重要になる。これは全く正しいアプローチです。
フリーランサーだったら全然いいわけですよ。「僕はPhotoshopができます」「僕は営業が得意です」で十分通用します。
会社がそう言う視点で人を探しますからね。
起業家脳:「お客さんの問題解決」を売る発想
でも起業を考えているなら話は別です。
起業家は「お客さんの問題を解決すること」でお金をもらいます。つまり、重要なのは「あなたが何者か」ではなく「お客さんにとってどんな価値を提供できるか」なんです。
実例:「何でも屋」から「専門家」への転身
例えば、僕の知り合いのWeb制作会社の話をしましょう。
最初は「何でもできるWeb制作会社」として営業していたんですが、全然受注が取れませんでした。ところが、ある日から「美容院専門のWeb制作」と名乗り始めたら、急に引き合いが増えたんです。
技術力は変わっていません。変わったのは「お客さんから見た価値」だけです。
商品ではなく「価値」を売る 〜ホームページ vs 集客の仕組み〜
ここで多くの人が勘違いするのが、「商品そのものを売っている」と思い込んでしまうことなんです。
美容院業界のリアルな悩み
美容院業界って、ホットペッパーで集客しているところがホント多いじゃないですか。
でも実際のところ、結構な費用がかかるんですよね。競合よりも抜き出ようとするとさらにプランを上げる必要がある。お金をかけて新規のお客さんを取れないことも普通にあります。
だから本当は止めたいけど、でもお客さんがたくさん来ることもあるしというジレンマがずっとあるわけです。
僕の知り合いのWeb制作会社は、まさにここを狙いに行ったんです。
サラリーマンとお客さんの決定的な違い
ここで重要なポイントがあります。
サラリーマンは「能力」を売ればいいのは、会社自体がその道の専門家だからなんです。
例えば、ホームページ制作会社が欲しがる人材はホームページを作れる能力を持った人です。
つまり雇いたいと考えている会社には「何が必要か」を判断する能力が備わっているから、それに見合う能力を求めるのです。
でもお客さんは専門家ではありません。専門家だったら自分でやりますからね。
つまり、お客さんは「何をすればいいのかわからない」状態なんです。
「スキルの羅列」では選ばれない理由
Room8でよく聞く話なんですが、こんな営業トークをする人がいます。
「僕はWebサイトも作れるし、SNS運用もできるし、動画編集もできます。なんでもお任せください!」
確かに、お客さんに明確なビジョンがある場合なら、この絞り込みは有効かもしれません。でもその時点で、お客さんはもうそこそこの専門性を持っているわけです。つまり、単純なリソース不足の問題なんですよね。
つまり、フリーランサーならその図式が成り立ちます。
でも現実は、多くのお客さんが「何をすればいいのかわからない」状態なんです。「Pythonできます!」って言われてもね・・・
特に中小企業の経営者は「デジタルマーケティングが必要らしいけど、具体的に何から始めればいいの?」という悩みを抱えています。
そんな人にスキルを羅列しても、逆にそれをどう使うか分からず困ってしまうんですよね。
問題解決の専門家として選ばれる
お客さんの立場で考えてみてください。あなたが美容院を経営していて、「ホットペッパー依存から脱却したい」という切実な悩みを抱えているとします。
- A社:「Webサイト制作、SNS運用、動画編集、なんでもできます」
- B社:「美容院専門、ホットペッパー脱却に特化したWeb制作会社です」
どちらに相談したくなりますか?
B社の方が「この人なら僕の問題を理解してくれそう」「同じような悩みを解決してきた実績がありそう」と感じるはずです。
つまり、スキルを売るのではなく、問題解決を売る。これが起業成功の鍵なんです。
ペルソナ設定の本質は「選ばれる優先順位を上げること」
Room8での相談で、「ペルソナって何ですか?」って聞かれることも多いんです。
マーケティングの教科書には「理想的な顧客像を詳細に設定する」なんて書いてありますが、正直言ってそんな小難しい話じゃありません。
ペルソナ設定の真の目的
ペルソナ設定の本質は、ズバリ「選ばれる優先順位を上げること」です。
例えば、美容院経営者をターゲットにする場合、こんな感じでペルソナを設定します。
【ペルソナ例】
- 美容院経営者
- 40代半ば
- 開業10年目
- ホットペッパー依存から脱却したい
- 月のホットペッパー費用が売上を圧迫している
- でも他の集客方法がわからない
なぜ具体的にするのか?
「美容院経営者向け」と「40代半ば、開業10年、ホットペッパー依存で悩む美容院経営者向け」では、刺さり方が全然違うんです。
後者を見た該当する経営者は「あ、これ完全に僕のことじゃん」って思うわけです。
一方、「美容院経営者向け」だと「僕も一応美容院経営者だけど、これって僕のための商品なのかな?」という迷いが生まれます。
「誰に・何を・どうやって」の重要性
起業で成功するためには、この3つを明確にする必要があります。
- 誰に:具体的なペルソナ
- 何を:お客さんが本当に欲しがっている価値
- どうやって:その価値を提供する具体的な方法
多くの人が「何を」の部分で商品そのものを考えてしまうんですが、実際には「お客さんが得られる結果」を考える必要があります。
美容院の例で言えば:
- 商品:ホームページ制作
- 価値:ホットペッパーに頼らない安定した集客
この違いを理解できれば、お客さんに選ばれる確率は格段に上がります。
「僕の強み」から脱却するために
結局のところ、「僕の強みは何ですか?」という質問は、自分を中心に考えているんです。
でも起業で大切なのは、お客さんを中心に考えること。
- 僕にはどんな能力があるか? → お客さんはどんな問題で困っているか?
- 僕は何ができるか? → お客さんは何を求めているか?
- 僕はどうアピールするか? → お客さんにとってどんな価値があるか?
この視点の転換ができた時、初めて「選ばれる起業家」になれるんです。
まとめ:「強み」の正体を見極めよう
今日、「僕の強みって何だと思いますか?」という質問をいただいて、改めて気づいたことがあります。
多くの人が起業の入り口で躓いているのは、「強み」の使い方を間違えているからなんですよね。
「強みの棚卸し」は必要なスタート地点
誤解しないでほしいのですが、自分の強みを把握することは大切です。
強みの棚卸し、つまり「自分には何ができるか?」を知ることは、起業の重要なスタート地点です。
でも、そこで止まってはいけない
問題は、多くの人がそこで止まってしまうことなんです。
本当に大切なのは、その次のステップです。
「自分にできることで、誰のどんな問題を解決するか?」
この視点転換ができるかどうかが、成功と失敗の分かれ道なんです。
本当の「強み」とは
- ❌ 僕にはこんな能力があります(棚卸しで終わり)
- ⭕ その能力でお客さんのこんな問題を解決できます
- ❌ 僕は何でもできます(能力の羅列)
- ⭕ こんな問題を解決できます
- ❌ 僕はこんな商品を作れます(商品思考)
- ⭕ お客さんにこんな価値を提供できます
顧客の本当のニーズを見抜く
ドラッカーも言っているように、顧客は自分のニーズを理解していないんです。
お客さんの意識では「ホームページが欲しい」だと思っているけど、本当のニーズは「ホームページを導入することでどうなるか?」なんですよね。ここが本質で、ここにアピールする必要があります。
美容院の例で言えば:
- 表面的なニーズ:「ホームページが欲しい」
- 本当のニーズ:「ホットペッパーに頼らず、安定して新規客を獲得できる状態になりたい」
Room8から見える起業成功のパターン
Room8で相談を受けていて感じるのは、成功する人ほど「強み」→「問題解決」の流れで考えているということです。
自分の能力を把握した上で、「この能力で誰を助けられるか?」「その人が本当に求めているのは何か?」を徹底的に考える。そして、その真のニーズを満たすために必要なスキルを後から補強していく。
これが、本当の意味での「強みファースト戦略」なんです。
今日からできること
もし今、自分の強みを活かした起業を考えているなら、こんな順番で考えてみてください。
- 自分には何ができるか?(強みの棚卸し)
- その能力で、どんな人の、どんな問題を解決できるか?
- その人が本当に求めているのは何か?(表面的なニーズの奥にある真のニーズ)
- それを手に入れるとどうなるのか?(お客さんが得られる結果をイメージさせる)
この順番で考えれば、自然と「選ばれる強み」が見えてきます。
そして何より大切なのは、完璧な答えを見つけてから動くのではなく、仮説を立てて実際にお客さんと話してみることです。
Room8はそんな「お客さん目線での起業」を応援しています。もし相談したいことがあれば、いつでもお気軽にどうぞ。きっと新しい視点が見つかるはずです。
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