こんにちは、春日井コワーキングスペースRoom8オーナーの鶴田です!
最近は「起業って、結局“虚構”を立ち上げることなんだよなぁ」とつくづく思う場面が増えてきました。
AIを活用した起業支援の現場にいると、何もなかったところから会社が立ち上がり、人が集まり、いつの間にか「現実」として機能している。その過程、まさに“フィクションを実装するプロセス”なんですよね。
とはいえ、「起業=虚構」なんて言うと、胡散臭いスピリチュアルか詐欺のマニュアルっぽく聞こえるかもしれません(笑)。
でもね、これは決して冗談ではなく、むしろ本質だと思ってます。
たとえば「会社」って、実体があるようでいて、書類1枚で生まれる存在。
資本金1円でも作れるし、法人格を持った瞬間に“存在することになる”。
つまり、「起業する」というのは、目に見えない物語を、現実に滑り込ませる作業だと言ってもいい。
今回のテーマは、まさにその“虚構としての起業”。
僕がRoom8を立ち上げた時のリアルな体験も交えながら、「どうやって虚構が現実になったのか?」を語っていきたいと思います。
「え、そんな話聞いて何になるの?」と思ったそこのあなた。
いい質問です。
この話が刺さるのは、これから何かを始めたい人、自分の物語を生きたい人、あるいは「自分には何もない」と思ってる人。
“無から何かを生む”って、実はそんなに神秘的な話じゃなくて、ちゃんと再現可能なロジックがあるんです。
それでは、本編スタートです。
Room8創業前夜

最初に出会ったのは、“場所”じゃなくて“概念”だった。
名古屋でたまたま入ったコワーキングスペース。
カフェのような空間に、パソコンを開いて仕事をする人たち。
それぞれの仕事をしてるはずなのに、どこか空気が柔らかくて、雑談も生まれてる。
「……え、なにこの空間。めっちゃいいじゃん」
正直、それまでの僕には“会社=オフィス”とか“仕事=家かカフェで一人”という選択肢しかなかった。
でもそこで見たのは、「働く場所にも、こんなに自由な形があっていいんだ」っていう可能性だった。
それからというもの、ずっと頭の中にその風景がこびりついて離れなかった。
春日井にこんな場所があったら、どれだけいいだろう。自分みたいな人、他にも絶対いるはずだ。
そう思ったら、もう止まらなかった。
「じゃあ、作るしかないか」
2014年4月30日、Room8はオープンした。
最初は何もわからず、机も椅子も知恵も乏しかったけど、それでも「欲しいと思った場所を、この街に実装する」。
その一点だけは、やけにブレなかった。
あとで思えば、これが虚構を立ち上げるということだったんだと気づく。
でも当時の僕にとっては、ただ「無いから作る」という、シンプルで強烈な衝動だった。
虚構に名前を与える

場所ができた。机も椅子も、ネットも通した。
でも、何かが決定的に足りなかった。
それが──名前。
名前がないと、人はそこに“意味”を感じない。
「とりあえず場所はあるんですよ」なんて言ったところで、誰の心にも刺さらない。
じゃあどうする?名乗るしかないでしょ。こっちから。
Room8(ルームエイト)。
それが僕が選んだ、この空間の“名”。
ただの数字じゃない。“8”にはいろんな意味を込めた。
まず、日本語的に「末広がり」。縁起がいい。
さらに、横にすれば「∞(無限)」。
この場所が、出会いと可能性のハブになればいい。そう思った。
それに、“Roommate”と“Room8”って、なんとなく音が似てて、語感がいい。
「ここで生まれるつながりは、ただの利用者同士じゃなくて、ちょっとルームメイトっぽい関係性になったら面白いな」
──そんな想像をしてた。ひとりで。
でも正直、ちょっと名前っぽくないよな?って自分でも思ってた。
案の定、「Room1から7もあるんですか?」って、聞かれる聞かれる(笑)。
「いや、そういうコンセプトじゃないんですよ」って毎回説明してたけど、
心の中では「虚構ってそうやって現実をだまくらかしてくるな」と思ってた。
実体がないからこそ、名前が先に走る。
まだ何も成し遂げてないのに、名前だけが先に一人歩きして、「Room8ってなんですか?」って聞かれる。
その瞬間に、もう虚構は成立してるんだよね。
だって、質問された時点で、“あることになってる”んだから。
名前を与えるって、そういう魔術だと思ってる。
他人をその虚構に巻き込む

Room8という名前を付けて、ロゴを作って、ウェブサイトも公開した。
でも最初のうちは、虚構はあくまで虚構だった。
現実っぽい外観をしてるだけで、中身はスカスカ。
イベントを立てても誰も来ないし、「なんか始めたっぽい」って噂されても、実態は僕ひとり。
でも、ある日。最初の利用者がやってきた。
その人が何をしていたかよりも、「ここで何かしよう」と思って来てくれた、その事実がデカかった。
だってそれって、僕が一人でこねくり回してた“空想”に、他人が乗ってきた瞬間なんだから。
それから少しずつ、「なんか面白そうだから来てみた」とか
「知り合いが使ってたから気になって」って人が現れるようになってきて。
──あのね、人が入るだけで、空間って一気に“それっぽく”なる。
それまでのRoom8は、ただの空きテナントだった。
でも人がPC開いて作業し始めた瞬間、「お、なんかコワーキングっぽいな」ってなるんよ。
虚構が現実を上書きするって、こういうことなんだなって思った。
最初の共感者、最初のユーザー。
彼らがいたからこそ、Room8という“物語”は独りよがりの妄想じゃなくなった。
虚構は、信じてくれる人が現れたとき、初めて社会に食い込む。
このプロセスがたまらなく面白くて、クセになった。
虚構を設計して、他人を巻き込んで、いつの間にか「みんなの物語」にしていく。
それが起業ってやつの、いちばんゾクゾクする瞬間だと思う。
虚構が現実を上書きする瞬間

今でこそ「コワーキングスペース」って言葉はそこそこ浸透してるけど、
2014年当時は、ほとんどの人が「何それ?カフェ?」って顔をしてた。
「コワーキングって“怖い”んですか?」って聞かれたこともある。いやマジで。
そんな時代に、いきなり「春日井にコワーキングスペース作ります!」って言っても、
反応はだいたいポカーンか、苦笑い。完全に変人枠。
でもね、それでも場所を作って、名前を付けて、発信を続けていると、
いつの間にか「なんかそういう場所っぽく」なっていった。
誰かが使い始め、イベントに人が来て、口コミが広がる。
すると今度は、「あ、Room8ってあのコワーキングのとこですよね?」なんて言われたりする。
いや、あの…あれですよ?
最初は僕が勝手に脳内で妄想した“架空の働き方革命ごっこ”だったんですよ?
それが数年経つと、「あることになってる」。
虚構が、現実をじわじわと塗り替えてきた。
僕自身、「コワーキングスペースRoom8を運営しています」って言うたびに、
最初はどこか居心地が悪かった。恥ずかしさもあったし、怪しげな空気もあった。
でも言い続けて、信じ続けて、誰かがそれを信じてくれて──
気づいたら、僕の方が現実を“信じてるフリ”じゃなく、本気で信じ始めてた。
人間って、「現実っぽいもの」を信じるようにできてる。
だから、虚構でも堂々と“それっぽく振る舞えば”勝ちなんだ。
演じ切った者だけが、虚構を現実にできる。
正直、「コワーキングスペース?何それ?」って時代に、
春日井でいきなりそんなこと始めたら、周りからは完全に「変なこと始めた人」扱いだった。
でもね、その“変なこと”に惹かれる人って、一定数いるんですわ。
そういうちょっとズレた感覚を持った人たちが、最初にやってきてくれた。
共感というより、「よくわかんないけど、なんか面白そう」ってノリで。
で、そこから始まった虚構が、徐々に現実を塗り替えていく。
最初は妄想。でも、演じ切って、信じて、誰かが乗ってきたら、もう止まらない。
気づけば、「コワーキングスペースRoom8」は、
本当にそう名乗っていい場所になっていた。
Room8は今も“虚構の上に立った現実”である

あれから10年。
Room8は、春日井で「コワーキングスペースといえば」くらいには認識されるようになった。
AIを活用した起業支援の場としても、だんだんと輪郭を持ち始めている。
でもね、これは“完成”じゃなくて、ずっと続いてるフィクションなんですよ。
人が変わり、時代が変わり、サービスも進化していく。
でも、根っこにあるのは最初に描いた「こういう場所があったらいいな」という願い。
Room8は、僕が勝手に思いついて、勝手に名前をつけて、勝手に始めた物語です。
それが少しずつ広がって、共鳴してくれる人が現れて、気づけば“現実っぽく”なってきた。
そうそう、2016年に法人化したときも、虚構をひとつ実感したんですよ。
僕はずっと「Room8のオーナー」って呼ばれてたのに、
登記した瞬間から、いきなり「社長!」って呼ばれるようになった(笑)。
いやいや、昨日と何も変わってないけど!?
でも、名刺の肩書きがそうなってるだけで、人の認識も変わる。
それが虚構の力。肩書きという最強のラベル。
僕たちは、そうやって虚構をまといながら、現実をじわじわと書き換えていく。
Room8は、今も“虚構の上に立った現実”だし、
だからこそ、まだまだ書き換え可能な“物語の途中”なんです。
次回は、この虚構が誰かの未来にどう火を灯すのか──
希望というフィクションの話をしていきます。
まとめ:起業とは、虚構を立ち上げるということ
会社を作る、サービスを始める、場所に名前をつける──
それらは全部、「存在しないものに、意味を与える行為」だ。
最初はただの空き物件。でも、Room8という名前を付けて、理念を込めて、
ひとりまたひとりと共感してくれる人が現れたとき、それは“現実”として立ち上がっていった。
誰かの想像が、誰かの信頼と交差したとき、虚構は現実を上書きする。
そしてそれは、法人化して「社長」と呼ばれるようになったときも同じだった。
結局、僕らが“現実”だと思ってるものの多くは、
意味を込めて、信じられて、続けられた虚構の産物に過ぎない。
でも、だからこそ面白い。だからこそ、自由に書き換えられる。
Room8は、いまもなお書き換え続けられている“物語の途中”だ。
次回は、この虚構が他人にどう伝播し、“希望”という新しい虚構を生むのか。
教育や起業支援の現場で見えてきた「誰かの未来に物語を渡す」という話をしていきます。