その独立起業、ちょっと待って!~23歳、社会経験ゼロで起業してしまった人間が語る、独立起業の恐怖

「あ~あ、オレも独立起業した方がきっと稼げるのになあ

tameiki

そう、Tは呟いた。

T20代後半、よくある中小企業勤めのサラリーマンだった。
無茶な営業ノルマを気合と根性で強引に達成する、昔ながらの会社のやり方に「古くさい、ばかばかしい」と常々不満を抱いていた。
「見てろよ、あの社長。目にもの見せてやる」

「よっしゃ~!ついに念願の独立起業だぜ!」

yahoou

Tは会社を辞め、貯金を元手に独立起業した。
「独立起業時の経費は最低限にすべし」と十分に勉強していたので、事務所も自宅を使用し、ぜいたくもほとんどしなかった。

それでも最初のころは、毎日が楽しかった。
商品やサービスの構想作り、対象となる顧客の明確化、異業種交流会で人脈作り、勉強会への参加などなど
確かに休みはなかったが、それはほとんど苦にならなかった。
自分の力で毎日を切り拓いている、その高揚感が動力源となったからである。

しかし、しばらくしてある日のこと

「まずい、来月の支払いどうしよう

多少なりとも売上はあったが、独立起業する前からこつこつ貯めていたはずのお金は、もう底をついていた。
支払いを補填するだけの売上を上げようにも、売る商品もろくにない。
ちょっと連絡しただけで「ぜひTさんの商品を売ってくれ」と言ってくれるような熱狂的ファンなお客様もいない。

「なぜどうしてこんなことに
うわああああああああああ!!!!!!!!!!」

gameover

どうもこんにちは、ビジネスプロデューサーの大西 隆貴(たかき)です。

Tさんのお話、いかがでしたか?
ドキッとしましたか?()
あ、先にお伝えしておきますが、この話はフィクションですからね。

しかし、実はこの約500文字のストーリーには、他でもない僕の失敗談がいくつか反映されているのです。
さて、今回はこの冒頭のお話から、

「独立起業時に気をつけたいこと」

について一緒に見ていきましょう。

ズバリ、Tさんは何を間違えたのか?

え?このたった500文字だけで分かるの?」

そうですね、執筆した本人ということもありますが、少なくとも僕は痛いほど分かります。
「あ、きっとこれだな」と。
僕が実際にお会いしてきた方々の中にも、少なからずTさんのような方はいらっしゃいますね。

では、僕の答えを言いますね。
ズバリ、Tさんは

「虚栄心」

によって追い込まれてしまったのです。
言い換えるなら、「見栄」とでもいったところでしょうか。

「ちょっと待って。Tさんはぜいたくしてないって書いてあったじゃないか」

おっしゃる通りです。
Tさんは新しい事務所も借りず、経費は最低限に抑えました。
では、Tさんの心に潜む、虚栄心とはいったい何なのでしょうか?

そもそもTさんは、なぜ独立起業したかったのか?

なんだか、国語の授業みたいになってきましたね()
ちなみに、僕は理系ですが、国語は得意だと思っています。
学生時代、アルバイトで個別指導塾に勤めていましたが、本業の数学や理科に加え、ちょくちょく国語の授業もしていました。(しかも相手は高校生…)

話がそれましたが、ちょっとTさんのお話を読み返してみましょう。

ここから、Tさんの心情が少し読み取れませんか?

「よっしゃ~!ついに念願の独立起業だぜ!」

あとはここからも。

自分の力で毎日を切り拓いている、その高揚感が動力源となったからである。

ピンときましたか?

前回の記事(リンク先参照)でもお伝えしましたが、要するに「何を目的とするのか?」というお話です。

「そんなの、独立起業して自分の力で食べていくことに決まってるじゃないか!」

その通りです。
心の底からそう言えるのなら、なんら問題はありません。
しかし、先ほどの引用箇所から考えられる答えは、ちょっと違いませんか?

そう、Tさんは

独立起業がしたかった、自分で事業をスタートさせたかった

のです。

「ん?それはどう違うの?」

文字に起こすと大したことはないかもしれませんが、これは決定的な違いです。
なぜなら、「食べていく」ことより、「独立起業する」ことの方が優先順位として高いからです。

つまり、Tさんは

独立起業して、自分の力でいくらかお金を稼げた時点で満足してしまっていた

のです。

お分かりいただけましたか?
これが、Tさんの心に潜んでいた「虚栄心」の正体です。

虚栄心を満たしたいだけなのか、それとも独立起業が本当に最善で、かつ必要な方法なのか?

僕も、今となっては分かります。
前回の記事の最後でなんかイイこと言った気がしますが、結局のところ虚栄心で独立起業してしまったのだと。

・自分で好きなことができてカッコイイ
・正社員の経験なしでもひとつふたつ仕事が取れた
・セミナーや書籍などでたくさん知識を学ぶのが面白い

などなど

他にもあげればキリがありませんが、このように十分な結果が出ていなくとも、その時点ですでに満足してしまっている自分がいたのです。

でも、そんな虚栄心をいくら満たしても、食べていくことはできないし、支払いは問答無用で迫ってくる。
まさしく見たくない、認めたくない自分のエゴですよね。
そしてまた無意識のうちに目をそらしてしまうから、それがエゴだとなかなか気づかない。
非常にタチが悪いものなのです。

僕は虚栄心にハマってしまったパターンなので、それを反面教師として考えるならば、やはり独立起業は「目的」ではなく「手段」であるべきなのでしょう。

「何を当たり前のことを」と言われそうな気がしますし、実際今これを書いている僕も自分で「何を当たり前のことを」と思っていますが、僕自身、そして僕がお会いした人たちも意外とこのことに気づいていません。

どんなに頭では否定しても、虚栄心から逃れることは難しい
じゃあ一体、どうすればいいのか?

だからこそまずは、これから独立起業する方には一度「ちょっと待った!」と言いたいのです。
その動機が、本当は「目立ちたいから」とか、「カッコよく振る舞いたいから」などといった、結果につながらないような虚栄心を満たすだけでないか、いま一度よく確かめてほしいからです。

もちろん、その虚栄心を満たすことも含めて、自分の人生です。
なので、「好きなことができればそれでいい!」という人を止めるつもりはありません。
また、前回の記事でも触れたように、仮に収入が少なくとも、支出を見直すことで収支のバランスを取っていくことも可能でしょう。

ただやはり、生活を送る上で先立つものは多少なりとも必要です。
その事実から、目をそらすことはできません。

そして、虚栄心をどう対処していけばいいか、ということについてですが、こればっかりは人間の業、とでもいうべきか、そんな簡単にどうにかなるんだったらみんなとっくの昔に大金持ちになっていますよね…()

ただ僕の経験として言えるのは、「その虚栄心は、本当に満たす必要があるのか?」と一度自分に問いかけてみるのは有効です。

例えば「あっ、コレほしい!」となったときに、「ちょっと待てよ、それは必要なのか、それともほしいだけなのか、どっちなんだろう?」と頭の中で考えるようにすると、客観的に考えられるようになります。
(子どもにおもちゃをねだられた時に、12日くらい時間をおかせると欲求が収まるのと同じです)

そして、「〇〇だから今は他にお金を使うべきことがある」と理由をつけて自分を納得させるようにすると、「じゃあまた今度にしよう」と冷静になることができます。
ちなみに、僕も浪費癖がひどいので、最近1日に1回は自分にこの質問をしている気がします()
個人差があります

以上、独立起業の前にいま一度気をつけたい、「虚栄心」の恐怖でした。

あ~、恐ろしや恐ろしや…()

繰り返しますが、人間である以上、誰の心にも虚栄心は潜んでいます。
そしてそれは、「臭いものにフタ」のごとく、そう簡単には気づかないものです。

だからこそ、自動車を運転するときに「一歩間違えると危険だ」と意識するように、「自分にも虚栄心があるんだ」という心構えを持つようにするのが、独立起業する上で大切であると、今は思います。

それでは、またお目にかかりましょう!
ありがとうございました!

P.S. 逆にマーケティングの視点から考えると、この「虚栄心」に働きかけることは、非常に有効な方法です。
ただし、「絶対お客様を不幸せにはしないぞ!」といった覚悟、そして倫理観がないと、どこかできっとボロが出るでしょうね
(インターネットが普及している今のご時世、ご存知の通りあっという間に「炎上」してしまうので…)

それはまた、別の機会にお話しすることにします。
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この記事を書いた人

大西 隆貴

自分で事業を立ち上げたり、他の事業にプロデューサー的な立ち位置として参加し、商品コンセプト・対象となる客層・販売方法などを検討し、関わる事業を成長させるのが仕事。

北海道で生まれ育ち、物理学者を志望して名古屋大学理学部へ入学。
大学院修士課程まで進学するも、肌が合わずに1年で中退。
自他ともに「勤め人には向いていない」と認める性格から、正社員として雇用される経験なしに起業を志し、その過程でマーケティングの知識と出会う。
幼少期より、物理や数学をはじめとして「他人が頭を悩ませるような難題を、あざやかに解決してみせる」ことに喜びを感じており、たちまち頭脳労働であるマーケティングの虜に。

以後、2年で約200万円を学びに投資し、現在もマーケティングやビジネスモデルの研究に余念がない。

Room8 Inc.代表・鶴田とはビジネスの師匠を同じくする仲。

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