尾張名古屋人は、我がことのように東海道無血を誇っていい

活用史観で斜め上に創る尾張名古屋史(3)

みなさん、おはこんばんちは。愛知県外の人と会ったとき「出身地の歴史の偉人は誰って習う?」と聞くことをフィールドワークにしている友人屋です。大垣出身の方に「え?戸田の殿様のこと知らないの?」と聞き返されたり、長崎出身の方には「大名とかは覚えていないけど、町の人も農家の人もみんなキリスト教なんですよ」と言われたりして、その多様な地元色にええわ~と悦に入っています。山口県出身の方には、その当時上演していた映画もあり「やっぱり長州ファイブかな」と言われ、無知だった私は「いいよね。維新の立役者がいて」なんて返したのを覚えています。
…バカ!私のバカ!いますよ、尾張にも。徳川慶勝(よしかつ)という、近代日本になくてはならなかったお方が。

歴史に名が残る基準は、ドラマになるかならないか

父の故郷である新潟県の長岡に行くと、祖母から教科書とは逆の歴史を聞かされます。
「明治新政府だの、勲一等だのと威張っているヤツがたくさんいるが、あんなのは泥棒だ。七万四〇〇〇石の長岡藩に無理やり喧嘩をしかけて、五万石を奪いとってしまった。連中の言う尊皇だなんて、泥棒の理屈さ」
長岡藩は家老・河井継之助(つぎのすけ)の指揮のもと「官軍」ー私は“西軍”と読んでいますがーを相手に大奮闘。一度は長岡城を奪われますが、夜襲をかけて取り戻しました。
(作家・半藤一利さん『もう一つの「幕末史」』より)

…と、幕末のとらえ方も地域や主観が違えば様々。薩長の動きを「維新(いろいろのことが改革されて、みな新しくなること。)」とするか「簒奪(さんだつ。本来なら継承資格が無い者が地位を奪取すること。)」とするかの評価は、決して一定ではありません。

ちなみに、尾張名古屋出身の私ですが、この越後長岡藩の家老でしかない河井継之助は知ってます。薩長軍にガトリングガンをぶっ放し、恐怖におとしいれたこの漢(もちろん、おとこと読みます)は、司馬遼太郎の「峠」でドラマチックに紹介されていますから。ちなみに映画「ラストサムライ」のガトリングガンのシーンは、この河井継之助さんにインスパイアされものといわれていますよね。確か。

尾張名古屋人は、徳川慶勝公のことを知ってほしい

戦中戦後にかかわらず、長岡藩の悲劇と復興の歴史は十分に中学校の時に叩き込まれました。私にとって河井継之助、(中略)…は、10年の知己のような存在です。
(またまた作家・半藤一利さん『もう一つの「幕末史」』より)

40年以上尾張名古屋に住み、歴史好きを自認する私でも、つい最近まで、御三家筆頭の尾張藩主で、朝廷からの信もあつく正二位(しょうにい/江戸幕府の将軍も在職中はこの位階に留まることが多い…とのこと)を授かった徳川慶勝さんのことを知りませんでした。日本の内乱を最小限におさめ、欧州列強の植民地化を防いだ偉人の一人なのに。

なぜか。中学校でもどこでも、叩き込まれてないから。いや。少しも触れられないから。

歴史好きな私でも知らないということは、普通の人は知るべくもないですよね。

「Why!?尾張名古屋の偉い人ピーポー!」

幕末の英傑でもある地域の藩主を知らないのに、長岡藩の家老のことを知っているというのは、ちょっとアンバランスだと思いませんか。地味だから?ドラマチックじゃないから?

決して地味じゃない徳川慶勝公の三大偉業を勝手にあげてみた

このお方が成した(といっていい)業績を箇条書きにしてみました。

●第一次長州征伐を最小限の犠牲でまとめた

●駿河や信濃などの他国を、官軍と称する薩長と戦わないようにまとめた(東海道無血)

●新政府での権利を自ら放棄し、幕藩体制の精算を図った

等々を“ガトリングガン”など武力に頼ることなく、自らの立場と信頼と周旋(事をとり行うために動きまわること)能力で成し得ました。

ここぞとばかりに戦争(略奪自由、偉い人間の首をはねた者が出世できる合戦の感覚?)したいと考える鼻息荒い薩長軍と、内乱で日本を疲弊させたい欧州列強が代理戦争を仕掛けている中、東海道に血の雨を降らせなかったのです。

勝海舟と西郷隆盛の会談による「江戸城無血開城」は有名ですが、まずはこの東海道無血も同じように語り継いでいきたいものですね。尾張名古屋出身の民が“父”のことを誇るように。

そりゃ確かにドラマにはなりにくいかもしれませんがね。話し合いのシーンばかりで地味ですから。

次回はこれらの偉業を紐解いていきたいと思っております。お楽しみに。

この記事を書いた人

友人屋

運だけを頼りにニッチを歩み、不惑の年へ突入。姓名判断の「大器晩成」のワードを信じ〝素振りを続けドラフトを待つ〟天性のオプティミスト。
デブ歴=年齢だったが、42歳で20kgのダイエットに成功。その方法を伝えるためブログサイトを展開している。